2018 Fiscal Year Research-status Report
新規有機ホスト無機複合体による特異な分離反応場の設計と難分解物質の捕集分解
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17K00596
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松宮 弘明 名古屋大学, 未来社会創造機構, 准教授 (10362287)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アドミセル / 界面活性剤 / 金属ナノ粒子 / ヘキサクロロベンゼン / 分解 / 有機溶融塩 / セルロース / 5-ヒドロキシメチルフルフラール |
Outline of Annual Research Achievements |
天然の酵素や微生物を環境浄化に利用する試みは数多いが、一般に生物分解は操作条件に敏感であり、また汚染物質との接触効率の向上が難しく、長時間の処理を要するなどの問題点がある。本研究では、これらの諸問題をバイオ技術とは別のアプローチで解決することを考え、酵素様活性を示す新規有機ホスト無機複合体を調製し、これに水中の汚染物質を濃縮した後、そのまま分解・低毒化する高効率な環境浄化システムの構築を目指した。 Fe/Ni金属粒子とアルキルアンモニウム系界面活性剤分子凝集体を多孔質シリカゲル細孔内に担持した有機/無機複合体について、地下水中の有害有機塩素化合物の処理を想定して検討してきた。しかし、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約で規制対象物質になっているヘキサクロロベンゼンでは、25%程度が未反応のまま残存し、脱塩素分解の進行も塩素原子が1つ脱離しただけで留まっていた。昨年度はFe/Ni系に代えてFe/Cu系の検討に着手し、萌芽的な結果が得られていたが、今年度は複合体の調製方法やシリカゲル細孔径、界面活性剤被覆密度などを最適化した結果、処理性能の改善がみられた。即ち、未反応のヘキサクロロベンゼンは検出されなくなり、脱塩素分解の進行も、3原子脱離生成物が40%程度まで、更に塩素原子が脱離した生成物も僅かながら確認された。一方、アルキルアンモニウム系溶融塩を反応媒体に利用して、セルロース系バイオマスの資源化も検討している。昨年度は、セルロースを完全ではないが糖化でき、高エネルギー密度燃料やプラスチックの原料となる5-ヒドロキシメチルフルフラールを収率10%程度で合成できたが、今年度はセルロースからの1段階合成の収率を15%程度にまで向上できた。また、人為起源で環境水中に混入する難分解性Gd錯体(MRI造影剤)の分解挙動についても検討を進めているが、今年度は粘土鉱物で懸濁している不均一系での検討に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヘキサクロロベンゼンに対する処理性能を向上でき、完全な脱塩素化処理に向けて見通しが立った。
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Strategy for Future Research Activity |
ヘキサクロロベンゼンの完全な脱塩素分解を目指して、Feと組み合わせる金属元素をCuに限らず検討する。また、セルロース系バイオマスの資源化について、生成物の抽出保護などをシステムに適宜導入して収率の向上を目指す。難分解性Gd錯体(MRI造影剤)の環境水中における分解挙動についても解析を進める。
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Causes of Carryover |
購入を考えていた機器を購入する必要がなくなったため次年度使用額が生じた。以降の物品費として予算執行する。
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Research Products
(3 results)