2017 Fiscal Year Research-status Report
固体触媒と磁気分離を利用した添加薬剤フリーの重金属イオン分別回収法の開発
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17K00598
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
秋山 庸子 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (50452470)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 重金属イオン / 固体触媒 / 再生利用 / 水酸化鉄 / 自己触媒反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、固体触媒を用いた酸化反応によって水中の重金属イオンを水酸化物や酸化物として析出させ、析出物の磁気的特性・析出条件・溶解条件の違いを利用し、重金属の種類ごとに分別回収して再利用を可能にする技術を開発する。吸着法やイオン交換法に対して大量処理が可能であり、磁性吸着剤やフェライト法を利用した従来の磁気分離法に対して化学薬品や磁性吸着剤の添加が不要な重金属除去法である。本研究では以下の特徴を持つ重金属イオンの分別回収法を開発することを目的としている。 ①薬品添加不要とすることで、スラッジ量が少なく装置の簡易化が可能、飲料水にも適用できる。 ②固体触媒を繰り返し利用できるようにすることで、処理の運転コストが削減できる。 ③重金属の種類ごとに分別回収することで、それぞれの重金属を有価物として再利用できる 平成29年度は、特に多くのウラン鉱山で高濃度に含有され問題となっている鉄イオンに関して、単独系での固体触媒表面での化学反応機構に基づく反応条件の検討を行った。出発物質として塩化鉄および硫酸鉄を用いて水酸化鉄(Ⅲ)を調製し、その乾燥条件によって徐鉄性能を検討した。 処理前後の鉄イオン濃度変化を比較したところ、出発物質に関わらず、乾燥した水酸化鉄を用いた場合は除鉄性能がほとんど見られなかった。その一方でスラリー状のまま用い、乾燥しなかった水酸化鉄(Ⅲ)を用いた場合では硫酸鉄の方は処理後の鉄イオン濃度が0.4 ppm程度(除去率98%)、塩化鉄の方は処理後の鉄イオン濃度が2 ppm程度(除去率90%)まで除去することができた。これらのことから、徐鉄触媒の調製法が確立できたため、その触媒作用のメカニズムを検討した結果、自己触媒反応、および乾燥による触媒の変性によって説明することができた。この結果に基づき、再生利用条件や回収法を視野に入れた検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H29年度の検討課題においては、重金属イオンの分離除去に有効な固体触媒の選定が大きな課題であったが、水酸化鉄スラリーを用いることにより、90%以上の高い分離率が得られた。そのメカニズムに関しても、いくつかの仮説を立て検証した結果、固体触媒表面で引き起こされる自己触媒反応、および乾燥による触媒の変性によって説明することができた。さらに、再利用と回収条件に関しても検討を進めており、磁化率に基づく回収および、複数回の利用による触媒性能の変化に関しても明らかになりつつあるため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策として、生成物の磁化率から、そのまま磁気分離法により回収することは不可能ではないものの、常磁性体であるために、超電導磁石などの高磁場が必要であることが明らかになったため、強磁性粒子の表面に固体触媒を担持する、あるいは単純な沈殿法により大きな粒子のみを取り除きながら微粒子は触媒として再利用するなどの方策を検討している。 またこれまでの研究では国内のウラン鉱山で問題となっている鉄イオンを主として検討してきたが、世界各国の鉱山で問題となっている他の重金属イオンへの適用性の確認、および共存系での分離回収に関して、H30年度~31年度において検討を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
本実験で排出された重金属の廃液処分を年度内に行う予定であったが、学内廃液処理スケジュールの関係で年度内の処分ができなかった。そのため翌年度分と合わせて廃液処分を行う。
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Research Products
(2 results)