2017 Fiscal Year Research-status Report
淡水湖沼への海水侵入が水質および物質循環に及ぼす影響の検討
Project/Area Number |
17K00614
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
増田 貴則 鳥取大学, 工学研究科, 准教授 (20293897)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 底質 / 溶出 / 栄養塩 / 海水侵入 |
Outline of Annual Research Achievements |
淡水湖沼として管理されていた鳥取県湖山池は海水導入により期待通りヒシ・アオコが消滅したが,水質や生物の種類・量に大きな変化が発生した.本研究では,淡水湖に海水が浸入した場合の水質形成,生物量への影響因子を把握することを目標に,実験室環境において海水侵入模擬試験を行う.本年度は淡水に近い汽水湖沼である鳥取県水尻池より底泥を採取し,海水侵入を模擬した溶出試験を行った.採取した底泥に対し,リン,おおび,窒素の濃度を水尻池の水質濃度に調整した模擬湖水を人工海水を用いて,塩分濃度が海水と同等(等倍),1/2倍,1/4倍,1/8倍,1/16倍,1/128倍(ほぼ水尻池採泥時とほぼ同程度)となるように調整し,20℃,暗所,好気的環境において3日間の溶出試験を繰り返し行ったところ,pH,DO(溶存酸素)濃度等には塩分濃度による差は見られなかったが,NH4-N(アンモニア態窒素),PO4-P(リン酸態リン)ともに塩分濃度が高いほど溶出量が大きくなるという結果が得られた.特に,海水と等倍濃度に調整した試験区では,他の試験区よりも高い溶出量が確認された.淡水湖沼に海水が浸入する際には,密度差により海水が底層を這うように侵入してくるとともに塩分躍層をつくり長時間底泥と高塩分濃度の海水が接することになることが想定されるため,本実験の成果を踏まえて海水侵入時の水質および物質循環への影響を検討することが重要となる可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね当初の計画通りに進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
計画に沿って推進していく. 引き続き海水侵入時のメカニズム把握のための実験を行う.過年度と同様の実験を行い,培養チューブまたは培養フラスコ内の微生物現存量を測定・解析する.これに加えて,中長期的には,海水侵入により在来の大型水生生物の枯死や植物プランクトン相の切り替わりが観察されてきたため,これらの沈降物や分解物が供給されることを想定した実験を行う予定である.また,塩分濃度の上昇,利用可能な炭素成分の増加,栄養塩濃度の増加を同時に与えた条件で室内実験を行い,結果から交互作用の確認と槽内生物量の挙動,物質循環,水質形成への影響を把握する. また,室内実験の結果を用いてモデル構築と検証を行う.申請者が開発してきたモデルを海水侵入室内実験の条件や構成のモデルに組み替えて,実験槽内生物量の挙動と水質,物質循環を検証する.室内実験の結果を再現できるようにモデルの改良と再計算を行い,海水侵入を再現できるモデルを開発する.
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Causes of Carryover |
実験装置の検討および実験・分析手順の検討に想定をしていたよりも日数を要したためである.各種の手順を確定でき次第,装置および水質センサーを増設し,技術補佐員を雇用し繰り返し実験作業を行う予定であったが,その部分がずれ込んだためである.一方で,本年度としては当初予定していなかった高塩分濃度での試験を実施しデータを得ることができたので,全体としての進捗には遅れは生じていない.実験・分析手順の検討を終えることができたものについて,今後,条件を変更しつつ繰り返し実験を行う予定であるので,次年度使用については当初計画のとおり装置および水質センサーを増設することと,技術補佐員を雇用することに使用する予定である.
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