2018 Fiscal Year Research-status Report
有効間隙率と現場飽和状態を把握する2種類の溶液を使う新たなトレーサー試験法の開発
Project/Area Number |
17K00615
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
小松 満 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (50325081)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小泉 圭吾 大阪大学, 工学研究科, 助教 (10362667)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 体積含水率 / 有効間隙率 / 擬似飽和状態 / 現場飽和状態 / 原位置試験 / 土中水分計 / トレーサー / エタノール水溶液 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,自然地盤において有効間隙率を原位置で簡便かつ迅速に求める試験法を提案するとともに,この手法を応用して現場での飽和状態を確認することを目的としており,初年度はトレーサー注入試験装置を試作して原位置試験を実施するとともに,サンプリング試料に対する室内透水試験結果との妥当性を検証した。2年目となる本年度は,引き続きサンプリング試料に対する室内透水試験を実施するとともに,現地をモデル化した鉛直一次元カラムによる降雨実験を行い,原位置で測定した擬似飽和状態と現場飽和状態に対する整合性を確認した。 具体的な実施内容と成果を下記に列挙する。 (1) 初年度に引き続き,現場から採取した試料に対する不飽和透水試験を実施した。その結果,現場で測定した擬似飽和状態及び現場飽和状態の体積含水率の値が整合したことから,室内試験によりこれらのパラメータを推定することが可能であることが判明した。 (2) 現地をモデル化した鉛直一次元カラムによる降雨実験を実施した。実験は排気条件と非排気条件で実施したところ,両者の体積含水率の変化に大差が認められることが判明した。さらに,注水後の体積含水率の低下挙動において,現場観測結果とは異なる現象を確認した。 (3) 試作したトレーサー注入試験装置は地表面付近から削孔した深度15cm程度のボーリング孔を対象にしていることから,深度方向の値を求めるにはトレンチを開削する必要がある。この点を改善するために,新たに長さ約1mの多深度土中水分計(6深度)を用いた注水試験方法を実施した。具体的には,水分計の測定影響範囲を考慮したアルミ製の円筒を深度1mまで打設してその中心部に土中水分計を設置し,円筒内に注水を行った際の水分量の経時変化を測定した。この方法により,一度の注水で深度方向の擬似飽和状態と現場飽和状態における体積含水率の値を評価することが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では,今年度に実施を延期していた一次元の室内トレーサー試験が装置の不具合で実施できなかったため,引き続き,擬似飽和状態での体積含水率と現場飽和状態から測定の有効間隙率,飽和状態から測定の有効間隙率の値についての関係性を明らかにする必要があることが課題として残った。 その一方で,現地をモデル化した鉛直一次元カラムによる降雨実験や初年度での課題を踏まえた新たな注水試験方法を実施できたことから,更なる課題を抽出することができた。 これらの研究成果は国内および国外の学会発表により公表するとともに,査読付き論文にまとめることができたことも鑑み,概ね順調に進展していると判断した
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる本年度は,これまでの成果をベースに得られた結果の妥当性について検証を行う。具体的には,擬似飽和状態での体積含水率と現場飽和状態から測定の有効間隙率,飽和状態から測定の有効間隙率の値についての関係性を明らかにするとともに,トレーサー試験等によりこれらの値の妥当性を検証する。また,初年度で課題となった注水流量の制御に対応できるよう試験装置の改良を行うとともに,当初計画に合わせてテンシオメータにより,注入時におけるサクションの変化と孔内水位の値も得ることができるようにする。
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Causes of Carryover |
(理由)当初は現場での実証実験を予定していたが,室内試験の実施が主となったため,旅費が次年度使用額として生じた。
(使用計画)新たな現場での実施を計画していることから,引き続き,研究分担者の旅費として使用する。
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