2017 Fiscal Year Research-status Report
Binderless type geopolymer concrete with industrial wastes
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17K00628
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
小泉 公志郎 日本大学, 理工学部, 准教授 (10312042)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 正己 日本大学, 理工学部, 准教授 (50580164)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 産業副産物 / 再資源化 / フライアッシュ / シリカフューム / ポゾラン反応 / 膨張 |
Outline of Annual Research Achievements |
結合材無添加(バインダーレス)型のジオポリマー作製にあたり,本年度は基本的な材料配合(フライアッシュ(以下FA)+シリカフューム(以下SF))の検討を行った。それぞれの粉末をFA:SFの質量比「100:0」,「99:1」,「90:10」,「75:25」および「50:50」にて混合し,10Mの水酸化ナトリウム水溶液にて水/粉体比=0.5のペーストを練り,密封容器中で80℃にて所定材齢まで養生を行った。この結果,粉体混合比が「75:25」および「50:50」の2配合については材齢28日をもっても全く固化しなかった。(得られた固化体は手で軽く粉砕できる程度の強度しか有せず)一方,SF配合比率が10%以下であれば材齢56日時点でかなりの強度を有する固化体が得られることが判明し,SFの過度な混合(質量比で10%以上)はジオポリマー硬化体の作製には適さない配合条件であると確認できた。そこで,水酸化ナトリウム水溶液の濃度および水粉体比は変化させず,SFの粉体混合比を最大で10%とし,「100:0」から「90:10」まで2%刻みの計6配合を再設定し硬化体の試製を試みた。この結果,いずれの粉体配合においても材齢7日~14日である程度の強度を有する硬化体が得られたため,硬化体を微粉砕し生成相を分析した。粉末X線回折による分析結果からは養生期間の進行に伴いFAおよびSFの非晶質相を示すブロードなハローが消失する結果が得られ,ポゾラン反応が進行しこれに伴うケイ酸ゲルの生成が促進され,当初の想定通りこれらが粉体粒子間をつなぐバインダーとして機能することが示唆された。 しかし,実際に圧縮強度を測定する目的で型枠を用いて硬化体の成型を試みたところ,SF配合量が多くなるに従い硬化体の膨張も大きいことが判明し,材料(特にSF)のポゾラン反応性と硬化のタイミングを見極めた材料配合が必要であることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
原材料(FAおよびSF)の化学反応(ポゾラン反応)が起こる点は想定通りであったものの,双方の材料が強固なマトリックスを形成する(ある程度の強度を発現する段階)前段階におけるSFの反応が想像以上に早く,ケイ酸ゲルの異常生成が硬化体全体の膨張をもたらしたものと考えられる。硬化体の形成時に粉体間の空隙量を超える容量のケイ酸ゲルが生成すると全体として膨張傾向を示すであろうことは想定済みであったものの,生成のタイミングが想定よりもかなり早い点は予想外であった。硬化前の段階におけるこの膨張を極力抑制するため,加熱前の混合粉体に対し,数時間~数日間の常温養生期間を設ける検討を試みたが,やはり加熱時の反応促進により膨張が確認され,得られた硬化体の内部にも多量の空隙が発生している状態を確認した。しかしながら混合粉体全体を密封容器内に封入し物理的に拘束を加えることで,これらの空隙は生成する膨張性のゲルに押しつぶされることで消滅し,結果として均一な状態の硬化体が得られることが判明した。 また一方で,得られた硬化体は想定以上の強度を有しており,以降の化学分析用に微粉砕するのが困難で,分析の前処理段階でかなりの時間を要する点も判明した。そこで本年度の研究予算において,硬化体試料を粗粉砕するためのダイヤモンドカッターと,さらにこれらを微粉砕化する遊星ボールミルを試料の前処理設備として新規に導入せざるを得なかった。遊星ボールミルの導入において,粉砕時の条件(粉砕用ボールや粉砕容器の回転速度)設定にも多少の検討時間を要したものの,今後は,硬化体が得られた後の化学分析のための前処理時間をかなり削減できる目処がついた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度中に確認できた最大の問題は,SFのポゾラン反応の活性が高い故に,生成するケイ酸ゲルの体積が多く,反応の極初期(硬化が始まる前段階)において硬化体全体の膨張が進行してしまう点にある。そこでこれらも含めた最適な材料配合および養生条件を検討する必要がある。 この問題の解決方法としては,①SFの配合量のさらなる減少(膨張性のケイ酸ゲル生成量の削減効果が見込まれる) ②ポゾラン反応を促進させるための加熱温度の低下または加熱時間の制限(一般的には65℃以上でポゾラン反応が活性化するが,現状は80℃にて養生を実施しており,これがSFの異常反応・膨張を伴う結果となったことから,反応温度を低下することによりSFの極初期におけるポゾラン反応を抑制することでケイ酸ゲル生成量の削減効果が見込まれる) ③アルカリ刺激剤(水酸化ナトリウム)水溶液の濃度を下げることでポゾラン反応の活性を落とし,急速なケイ酸ゲルの異常生成を抑制することが期待できる等が考えられる。 またこれと同時に,SFのアルカリ刺激による膨張挙動を正確に知っておく必要性から,SF単独でのポゾラン反応における膨張量を定量化しておく必要がある。さらにFAについても同様に(SFほどではないものの)その膨張挙動を確認しておく必要があり,粉体全体の空隙量=生成ゲルの体積に限りなく近くなるような最適配合および養生条件(アルカリ刺激剤の濃度,養生温度,SF粉体配合量の検討)を見出すのが喫緊の課題となる。 また一方で,ケイ酸ゲルの異常膨張自体は拘束条件下で養生することにより,内部に発生する空隙をキャンセル(消滅させる)できることが確認できているため,種々の配合による硬化体の圧縮強度の把握も早急に実施予定である。
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