2017 Fiscal Year Research-status Report
Diffusion and persistency of the freshwater cyanotoxin in the marine ecosystem.
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17K00639
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Research Institution | Kumamoto Health Science University |
Principal Investigator |
高橋 徹 熊本保健科学大学, 保健科学部, 教授 (70369122)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
正木 孝幸 熊本保健科学大学, 保健科学部, 教授 (00746232)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ミクロキスティス / ミクロシスチン / 一次純生産 / ミクロシスチン合成酵素 / ミクロシスチン分解酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年は明確に目視できるシアノバクテリアの大発生がみられなかったため、海域の調査は実施しなかった。しかし、表層に拡散していないだけで、有毒ミクロキスティスは確実に発生しており、水や堆積物間隙水からは一定濃度のミクロシスチン類(MCs)が検出された。しかも、非発生期の3月の間隙水中MCs濃度はミクロキスティスシーズン終了直後のそれより高かった。この事は、低水温期の堆積物中でミクロキスティスが生残し、かつMCsを生産し続けている事を強く示唆している。同様の事が海底でも進行しているとすれば、2012年の海底データを説明する事ができる。この点をより明白にするために、過去10年分の同時期のデータを再確認しているところであるが、低水温期中のMCs産生はほぼ間違いない現象と思われる。さらに、今期のMCs濃度が高い時期の堆積物サンプルを用い、改めて分解実験をおこない、堆積物中で起こっているMCs産生-分解過程をより確実に把握するため、MCs産生酵素と分解酵素をコードするmRNAの発現を調べる準備を進めている。 なお、韓国ナクトンガンの河口から上流100km地点までの河床から採取された堆積物にも相当量のMCsが検出された。従来、シアノバクテリア非発生期の残留MCsはあまり注目されてこなかったが、この調査の結果は、有毒シアノバクテリアが大量発生した河川・沿岸域において、MCsあるいは他のシアノトキシンの残留は普遍的現象である可能性を示している。 また、シアノバクテリア大発生を待つ中で時期を失した一次純生産の測定も準備を進めている。今期は大発生の有無に拘わらず、測定を実施したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2017年はシアノバクテリアの大発生を待つ間に基礎生産調査等の時期を逃してしまった。しかし、目視できない状況でも、浮遊状態での有毒ミクロシスチンが発生していた事が後にわかった。こうした状況の中で、野外調査の回数は少なかったが、室内分解実験の2ラウンド目を実施し、リアルタイムPCRによりミクロシスチン合成酵素と分解酵素のDNA量の動態をおおむね把握する事ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1) 分解実験におけるミクロシスチン合成/分解酵素遺伝子の動態はリアルタイムPCRからリアルタイムRT-PCRに変えて、mRNAの発現を把握する。 2)計画通り基礎生産測定に着手する。透明度が極単に低い特殊な環境なので、興味深い結果が期待される。基礎生産と産生される毒素量の関係を明白にすると共に、有明粘土によって極単に透明度が低い特殊な水域の特徴を明らかにしたい。 3) 他研究室の調査に協力依頼し、有明海海底堆積物を入手し、MCs濃度と共にmRNAの発現を調べ、室内実験結果と比較して考察する。
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Causes of Carryover |
2017年夏期には目視できる形でのシアノバクテリア発生がなく、一次生産調査の機会を見送った。しかし、そういう状況でも水中発生している事が把握出来たので、2018年度に実施したい。
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