2017 Fiscal Year Research-status Report
The conservation and landscape genetics of tidal marshes after the Great Tohoku Earthquake
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17K00644
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大林 夏湖 東京大学, 大学院総合文化研究科, 学術研究員 (20448202)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
程木 義邦 京都大学, 生態学研究センター, 研究員 (60632122)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 保全遺伝学 / 東日本大震災 / 塩生湿地植物 / オオクグ / SSR解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は2011年度に東日本大震災を経験した東北沿岸個体群のうち(1)津波後に新たに形成された砂州に出現したオオクグ個体群の調査および、(2)2008年に調査を行った国内個体群の現地調査とDNAサンプル採集を行った。 東日本大震災後に出現した東北沿岸個体群については、主に福島県相馬市で報告があったため、福島大学の研究者にご協力をお願いし、現状調査とサンプリングを行った。相馬市内では、防潮堤建設のため、既に堤防内側に隔離されてしまった広大な砂州(保護区に設定されている)でのサンプリングを試みた。震災後6年ほど経過していることもあり、また現状塩分が入りにくい状況にあることもあり、オオクグは多くの陸上植物と混在して生育していた。他の塩生植物や陸上植物とともにパッチ状に、オオクグに好適な生育場所と思われるところに点々と生育していた。また、相馬市内では近隣で数カ所、堤防の内側の内陸部、津波によって内陸部に持ち込まれた砂に新規のパッチが見られた。津波後に遺伝的多様性および個体群サイズを大規模に回復させた名取川河口の広浦個体群は、当該地域の農耕地への転向により、個体群がほぼ消滅してしまっていた。また、北上川河口個体群は、地震後の地盤沈下等の影響により、津波前の地点より上流部に砂州が形成され少数のオオクグが2014年に確認されていたが、2017年現在、広大な面積でのオオクグ個体群が回復していた。この地点が現時点で震災以降に残ったオオクグの良好な生育場所と考えられた。 2008年に調査を行った日本国内個体群の2017年度の再調査では、特に島根県斐伊川水系での個体群衰退・絶滅が顕著で、消滅した個体群がいくつか見られた。一方で、大橋川河口中海側の個体群の顕著な個体数増加がみられた。 これらの遺伝的多様性についてさらなる解明を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2008年度に採集を行ったすべての地点で現地調査を行えたこと、また、津波によって新規に形成されたオオクグ個体群のうち、津波前は記載がなかった地点でのサンプリングと現地調査を行うことができたことは大きな成果である。これらの遺伝的多様性を記載しておくことは、大規模攪乱が塩生植物の遺伝的構成に与えた影響を詳細に記述することとなり、将来の塩生植物の保全に役立つと考える。また津波前後の同一水系でのオオクグの遺伝的構成の比較の結果、津波後に遺伝的多様性が回復したという研究結果を国際誌Scientific reportsに掲載した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、昨年度の調査でサンプリングの補足が必要な場所での再調査、及び、サンプルの遺伝解析を進める予定である。
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Causes of Carryover |
(理由)東北地方太平洋沿岸で、東日本大震災の津波後にこれまで記載のなかった新規砂州がどの程度あるのか、またどのサンプルを使用してトランスクリプトーム解析を行うのが最適かを全国調査の結果をみて判断する必要が生じ、全国調査の実施を優先的に行ったため。 (使用計画)東北地方相馬市内の個体と島根県斐伊川水系の個体が最適であると判断したため、これらのトランスクリプトーム解析を外注で行う予定である。
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Research Products
(1 results)