2017 Fiscal Year Research-status Report
Effects of non-native species through resource partitioning: alteration of productivity
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17K00646
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
井上 幹生 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 教授 (10294787)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 移入種 / アマゴ / イワナ / 資源分割 / 捕食 |
Outline of Annual Research Achievements |
河川生態系においては移入種が在来種を絶滅させる例よりも、在来種を排除せずに共存する例の方が圧倒的に多い。つまり、移入種による種数の増加は普遍的に見られる現象であるが、その点を直視した研究は少ない。本研究は、渓流生態系におけるサケ科魚類を対象に、移入種の定着が生産構造に及ぼす影響、すなわち、「資源分割を介した魚類の総生産量の増加と被食者(底生無脊椎動物)現存量の低下」という予測を検証する。本研究は、移入種の影響に対する多角的な見方を提供するのみならず、保全論理の根幹を為す「種多様性の機能」の一つ(Diversity-productivity relationships)を検証する試みでもある。 調査は、四国の仁淀川水系・黒川源流域で行い、在来種であるアマゴと移入種であるイワナの共存が、これら2種の総生産量を高めるかどうか、また、被食者である底生無脊椎動物への捕食圧が高まるかどうかの2点について検討する。2017年度は、アマゴのみが生息するアマゴ区間、イワナが優占的であるイワナ区間、アマゴとイワナが同程度に生息する共存区間、および魚類が生息しない区間の4条件下で、総計16区間を設定した。2017年6月より、各区間において魚類の標識再捕調査を行い個体毎の成長、および個体数、現存量の動態の観測を継続している。また、各区間の生息環境特性および魚類に対する系外資源(落下陸生無脊椎動物)の供給量の定量を行った。底生無脊椎動物に対する捕食圧については、夏季である8月と冬季である11月に各区間の礫表面から底生無脊椎動物の採集を行った。また、これまでに本調査地で得られているアマゴとイワナに関する予備的知見をまとめて日本魚類学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
魚類の生産量に関する標識再捕調査および捕食圧に関する底生無脊椎動物調査の2つを、2017年度内に計画どおりに着手することができたため。具体的には、魚種組成の異なる4条件下で総計16区間を設定し、個体の成長、個体群レベルでの生産を計測するための調査を6月から開始することができ、以降、8月、11月と継続観測を続けている。また、同じ調査地にて、魚類による捕食圧を調べるための調査を夏(8月)と冬(11月)に実施することができた。このことから、野外での調査は予定通り順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
魚類の標識再捕調査を継続する。 底生無脊椎動物の羽化量の指標として飛翔性昆虫の個体数を定量する。 2017年度に得られた底生無脊椎動物および落下陸生無脊椎動物のサンプル処理を進める。
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Causes of Carryover |
魚類の標識再捕調査および底生無脊椎動物の採集を3月下旬から4月初め頃に行う必要があった。また、3月にサンプル処理のための謝金を必要とした。これらの理由から、年度末に不足が生じることが無いよう少々余裕を持って予算を確保していたため。次年度使用額は、調査用消耗品の購入にあてる。
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