2017 Fiscal Year Research-status Report
外来樹木の侵入と駆除に伴う森林の水循環と植物群集の変化:生態系の持続可能性の検討
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17K00648
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
畑 憲治 首都大学東京, 理工学研究科, 研究員 (60468147)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | novel ecosystem / 海洋島 / 侵略的外来種 |
Outline of Annual Research Achievements |
外来木本種の侵入とその駆除に伴う森林生態系の変化を、novel ecosystemの考え方に基づき、生態系内の水循環と植物群集の特性の組み合わせに着目して明らかにする。そのために、小笠原諸島において外来木本種トクサバモクマオウの優占の程度と駆除からの経過時間が異なる場所において、植物群集特性と水文環境特性の関係を比較、分類、序列化する。これらの結果に基づいて外来木本種の侵入と駆除に伴って森林の植物群集と水文環境がどのように変化するかを予測し、生態系の機能の持続性を重視した生態系の管理手法を提案する。 小笠原諸島西島のトクサバモクマオウの優占度と駆除からの経過時間が異なる森林(20地点)において植生調査を実施した。また同地点で表層の土壌含水率を1年間継続的に測定した。 トクサバモクマオウが優占する森林における表層の土壌含水率は、在来木本種が優占する森林よりも低い傾向が見られた。また、トクサバモクマオウを駆除した森林における土壌含水率は、トクサバモクマオウが優占する森林、つまり駆除をしていない森林よりも高い傾向が見られた。この駆除後における値は在来木本種が優占する森林における値より低い傾向が見られた。以上の結果は、トクサバモクマオウの侵入によって土壌含水量は低下し、同種の駆除によって侵入前の状態に近づいた、という可能性と矛盾しない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
森林植生データと土壌含水量データを確保した点についてはおおむね踏著の計画通りである。一方で、水文環境特性の新たな測定に関しては下記の理由から進めることができなかった。 調査予定地は小笠原諸島は全て国立公園であり、かつ多くが環境省が指定する特別保護区や特別地域に含まれる。この中で調査、特に測定器材の長期的な設置には複数の官公庁に許認可を得る必要がある。担当者と事前に相談した結果、調査候補地のいくつかは自然保護事業の実施対照地域に含まれるため許認可が降りる可能性が低いことがわかり、代替地を探す必要が出てきた。 しかし、すでに存在するデータのみでも追加のデータ解析によって当初の計画の主要な部分については十分な成果が得られることが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
得られた土壌含水率のデータについて定量的な解析を実施する。場所による違いの有無を検証するための統計モデル構築する。また、降雨や乾燥、気温の変化に対する土壌含水率の時間変化パターンに対してトクサバモクマオウの侵入と駆除がどのように影響しているかを検証する。そのために、気象庁の降水量データを用いて降雨時と乾燥時における土壌含水率の変化を定量化する。
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Causes of Carryover |
当初予定していた水文環境特性の測定のための器材の設置の許可が下りる見込みが低く、平成29年度は代替地の探索のみしかできなかった。そのため、設置予定だった器材の購入や設置のための旅費などが実施できなかった。これが次年度使用額が生じた主な理由である。
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Research Products
(8 results)