2017 Fiscal Year Research-status Report
里地里山における管理放棄された水田・水路での水生生物生態環境の劣化プロセスの把握
Project/Area Number |
17K00651
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
柿野 亘 北里大学, 獣医学部, 講師 (10623936)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
守山 拓弥 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (70640126)
落合 博之 北里大学, 獣医学部, 講師 (90440156)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 管理放棄 / 水域生態系 / 生息環境評価 / 谷地形 |
Outline of Annual Research Achievements |
管理放棄された谷の流域を網羅する大空間スケールでの魚類生息環境評価について、SVAP(Stream Visual Assessment Protocol)を用いて評価した。この結果、河畔林が繁茂した区間では、高い評価が得られ、耕地やコンクリートライニング構造の区間では低い評価であった。水質(TN、TP)は、上流域の方で濃度が高い傾向があり、下流ほど希釈されて濃度が低くなった。採捕魚類は、下流側の区間でヤマメが採捕された。以上から、管理放棄されることによって、水田水域の魚類相から渓流水域の魚類相に変化している可能性がうかがわれ、今後、地域資源管理する上で重要な知見が得られた。 中空間スケールでは、2016年度の台風10号(8月29-30日に対象地上空通過)によって、管理放棄でヤナギ群落化した元農地(水田)の複数のヤナギが根ごと倒木した。その際に形成された水溜り(ギャップ)がカエル類の生息環境として成立するか否かを調べた。その結果、ヤマアカガエルの越冬場として機能していることが判明した。しかし、管理放棄に伴う個体数の減少により、個体群として成り立っていないことが明らかになった。 小空間スケールでは、耕作放棄されたばかりの水田(2260.6㎡)で45か所(6月)、58か所(9月)の金網製ウケに集魚剤を入れて、水生生物を採捕した。最も多く採捕されたドジョウは、除去法によって生息個体数推定を行い、0.2個体/㎡(6月)、0.1~0.2個体/㎡(9月)であり、耕作水田での生息密度よりも低かった。耕作水田 水田内の植被率は、6%(6月)、60%(7月)、100%(9月)と草本類が繁茂した。 管理放棄に伴って水田・水路生態系が劣化する一方で、河川を軸とした渓流生態系に変化する可能性が空間スケールごとで示唆されたことは、将来の地域ごとでの生態系管理計画立案に資する知見として極めて意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
天候や季節に伴う水域面積の増減について、水位等の経時的な測定がスズメバチや積雪のためにデータがとれていない箇所があるが、計画書で立案した仮説に準じた成果が得られており、全体的に順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
空間スケールごとの成果を踏まえ、当初、仮説立てていた水田・水路の管理放棄に伴う水田・水路生態系の劣化は、一方で河川を軸とした渓流生態系の成立の可能性があることが示唆された。今後、水田・水路生態系の劣化が進行しやすい環境を、空間スケールごとに区分し、区分ごとに劣化(渓流化)プロセスイメージを作成する。また、水路や河川の土羽護岸の崩壊要因に土壌中の水分移動が関わっており、水分移動に伴う崩壊メカニズムおよび土羽ごとの崩壊プロセスについても言及できる可能性があるため、引き続き水分移動についてもデータを採取する。
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Causes of Carryover |
遊水地の形成が見込まれる場所に設置するロガーおよび治具施設構築を計画している。学会での研究成果発表を考えている。
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