2018 Fiscal Year Research-status Report
里地里山における管理放棄された水田・水路での水生生物生態環境の劣化プロセスの把握
Project/Area Number |
17K00651
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
柿野 亘 北里大学, 獣医学部, 講師 (10623936)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
守山 拓弥 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (70640126)
落合 博之 北里大学, 獣医学部, 講師 (90440156)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 耕作放棄 / 魚類 / カエル類 / 越水 / 地下水位 / 除去法 |
Outline of Annual Research Achievements |
わが国の中山間地域に含まれる多くの谷底では,耕作放棄地面積が広がっている。また当該地域では,遷移が進行し,水路が消失し,かつての水田環境と比して荒廃化が進んでいる。水田・水路生態系に属する水生生物の生息環境および水生生物相の変化を把握した上で地域の事情に応じた保全・活用方法を提示する,2年目の成果実績は,空間スケール別に次のとおりである。すなわち,①大空間スケールでは,殆どの水田が耕作放棄された谷底面において,流路延長5300mの小河川上で,水位ロガーを用いて台風時の越水可否を調べたところ4か所の越水地点が判明した。それぞれの越水・周囲の湛水期間の延べ日数は,上流域から5日,75日,9日,47日であった。最も湛水期間が長かった地点では,下流側に堆積した倒木や落葉落枝によって上流側が堰上げされやすい状況にあった。このような状況は,小河川全体で複数確認されており,越水地点が今後増加する可能性がうかがわれた。②中空間スケールでは,2017年度から耕作放棄した水田に隣接する林地において,2016年と2017年で地下水位を比較したところ,有意に2016年の方が地下数位が高かったことから,水田や水路の有無は,周辺の地下水位や地表での湛水可否に影響を与えることが明らかになった。また,このことはヤマアカガエルを主とするカエル類の産卵場創出に繋がり,生息分布に与える影響に関わることが判明した。③小空間スケールでは,耕作放棄水田に湧水が流入している状態でのドジョウの生息個体数を昨年に引き続き,除去法で推定したところ,353~533個体(9月)であった。また,2017年では,7月に0歳魚が多数確認されたが,2018年では,9月に多数確認されたことから,水温変化の程度が2か年で異なっていたことが一因と推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
空間スケールごとに,水田・水路生態系の劣化状況が概ね明らかになった。しかし,一方で,昨年同様に荒廃状況が異なる水域生態系を有していることもうかがわれた。これを踏まえると,当該土地利用・活用方法を検討の一助になりえると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の進捗状況を踏まえ,研究実施計画どおり当該の谷底の水域の土地利用・活用方法の検討,提案を行う。また,昨年と同様に地下水位や洪水頻度の測定も併せて実施する。
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Causes of Carryover |
昨年度の水位および地下水位の結果を踏まえ,測定地点を増加する分を残している。このため,河川および水田での新たな設置を予定している。
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Research Products
(2 results)