2018 Fiscal Year Research-status Report
Leaf decomposition at temporary water area in Satoyama forest
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17K00652
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
河内 香織 近畿大学, 農学部, 講師 (50423984)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 落葉分解 / 渓流 / 水生昆虫 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、里山林を流れる小渓流を対象として主に落葉分解に焦点を当てて研究を行う。森林から落下した落葉が多量に供給され陸域と水域のつながりが密接であるこの場所は、降雨量によって表流水の量が大きく影響を受け、陸域と水域が頻繁に入れ替わる一時的水域である。山地渓流において落葉は河川生態系にとって 重要な有機物の供給源であり、落葉の分解は溶脱、微生物の定着、大型無脊椎動物の摂食が、重なりを持った時系列で進行する。分解過程において落葉が渓流生 態系に組み込まれるために重要なのが微生物の定着である。現在渓流域では主に水生昆虫類と、真菌である水生菌類の研究は進んでいるものの、バクテリアに関する実験 はまだ少ない。 30年度は、奈良県奈良市内の里山林内を流れる細流において、樹種を混合した場合と混合しない場合における落葉の分解過程と微生物の定着について明らかにすることを試みた。実験はヒノキ、アラカシ、モウソウチクを用いて夏季に開始したが、落葉から得たゲノムの量が少なく、解析に必要な量まで増幅することができなかった。初年度同様に、落葉によって得られるゲノム量が大きく異なるため、次世代シークエンサー(Miseq)で分析するまでに濃度を均一に精製することが今後の課題である。実験を行った細流周辺で見られた昆虫群集についてもマレーズトラップで採取して同定記録した。細流周辺では水生昆虫のみならず、陸生昆虫も多く観察された。実験を行った細流では、奈良県で詳しい分布記録の無いシナノビル(Myxobdella sinanensis)が採取された。本種は夏季には様々な大きさの個体が細流上の礫裏で見られたが、冬季には全く見つけることができなかった。来年度は、上流に見られるこの種の生態についても注目したいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
想定していたよりも、PCRの結果が芳しくなく、Miseqにかけるまでに時間がかかったこと、また精製がうまくいかず、Miseqの結果が途中でエラーとなったことが大きな理由である。落葉を回収し、DNAを抽出した後の精製が課題である。次回はサンプル数を減らし、また、これまでの実験から得られた抽出できるDNA量が多い樹種を中心として、まずはバクテリア構成について明らかにしていく。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの実験から、分解速度の遅い落葉は、水生昆虫の定着が少ないだけでなく、DNAの抽出量も少ないことがわかった。そのため、アラカシを含む常緑広葉樹で葉が固く分解の遅い樹種は除外し、分解しやすい樹種を中心としてDNAの抽出を進め、バクテリア構成について見ていく。本当は分解の遅い樹種と早い樹種両方見たほうが良いが、ゲノムの精製がうまくいかない可能性がある。昨年度はシナノビルが見つかったため、この種についても注目する。シナノビルは、細流の水が直接当たっていない礫裏に生息しているように見受けられたが、さらに生息場所などについて詳細に見ていきたい。一時的水域はこの種の生息に適した環境である可能性がある。
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Causes of Carryover |
DNAの抽出精製に時間がかかったため、想定よりも解析用カートリッジおよび関連試薬の購入量が少なかったため。次年度は主にMiseqカートリッジおよびその前処理のための試薬購入をする予定である。
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