2017 Fiscal Year Research-status Report
襟裳岬の周辺海域における風力エネルギーの変動メカニズムの解明と風況情報の高度化
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17K00657
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
島田 照久 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (30374896)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 海上風 / 地形性強風 / 気象シミュレーション / 衛星観測 / 襟裳岬 / 洋上風力エネルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「襟裳岬の周辺海域で発生する地形性強風の変動メカニズムを解明し、その気象学的理解に基づいて洋上風況情報の高度化に貢献する」ことである。襟裳岬の周辺海域には、日本沿岸で最大級の洋上風力エネルギーの賦存量・導入ポテンシャルがあるが、その主な要因が襟裳岬の周辺海域で発生する地形性強風であると考えられる。平成29年度は、夏季に発生する地形性強風を対象として、観測データの解析と気象モデルによるシミュレーションを実施した。主な成果は下記の通りである。1)衛星搭載マイクロ波散乱計による海上風観測と現場観測から、襟裳岬周辺の海上風の気候学的特徴を解析した。襟裳岬では、夏季は北東風の頻度が最も高い。また、襟裳岬の南西に強風が形成されるときは、ヤマセ(オホーツク海/太平洋から北日本に向かって吹く冷たい東風)が卓越していることがわかった。2)衛星搭載マイクロ波散乱計の海上風観測などから、襟裳岬の南西に大規模な地形性強風が発生している事例(2003年6月)を特定し、気象モデル(WRF)を用いて地形性強風のシミュレーションを行った。2003年の夏季は、北太平洋の亜寒帯海域上で形成された下層の冷気が、北日本まで顕著に南下していた時期である。このシミュレーション結果から、北海道に北東から押し寄せた下層の冷気が、日高山脈の東側でせき止められることがわかった。また、日高山脈によってせき止められた下層の冷気が南に流れ、強風形成と関係することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、当初の計画通りに、夏季の東風時に発生する地形性強風の事例解析を行うことができた。また、この事例解析の元となった研究論文が学術誌に掲載された。今後の研究を実施する上での問題は生じていない。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の変更が必要な点はなく、研究を実施する上での問題も生じていない。平成30年度は、冬季の東風時に発生する地形性強風の事例解析を行い、平成29年度の成果と一緒に成果をまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは、本研究に必要なスペックのワークステーションの購入価格が、計画当初の見積もり価格よりも低くなっていたからである。この次年度使用額は、平成30年度に購入予定の機器をより高スペックなものにすることに使用し、研究の効率化を図る。
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