2018 Fiscal Year Research-status Report
Fabrication of highly dispersed cellulose nanofibers/polymer composites and their functionalization
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17K00665
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉岡 まり子 京都大学, 農学研究科, 准教授 (30220594)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | セルロースナノファイバー / アセチル化 / UV硬化型樹脂 / アクリロイル化変性ポリロタキサン / 混練機 / 脂肪酸処理炭酸カルシウム / ポリエチレン / 凝集抑制 |
Outline of Annual Research Achievements |
(株)スギノマシン製バイオマスナノファイバー“BiNFi-s”(セルロース粉末の超高圧斜向衝突処理済み水スラリー;5wt%) を蒸留水で5倍に希釈し、高速ホモジナイザー処理を行いセルロースナノファイバー(CNF)水懸濁液(1 wt%)を得た。そこにジメチルスルホキシド(DMSO)を加えた後、系内の水を減圧留去して、CNF/DMSO懸濁液(1wt%)を調製し、アセチル化剤として酢酸ビニル、触媒として炭酸カリウムを用いて、80℃でCNFのアセチル化を行った。生成物、すなわちアセチル化CNF(Ac-CNF)を凍結乾燥後にフーリエ変換赤外分光光度計測定、中和滴定による置換度(DS)算出、電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)観察、WAXD測定および分散性試験に供し、特性化を行った。また、Ac-CNF/アセトン懸濁液を調製後、イソボルニルアクリレート(IB、共栄社化学(株)製)、反応性希釈剤(HAI、共栄社化学(株)製)、光重合開始剤、アクリロイル化変性ポリロタキサン(PRX;ASM社製)およびアセトンとを混合し、乾燥処理後、紫外線(UV)を照射してIB-HAI/Ac-CNF/PRX複合フィルムを作製した。得られた複合フィルムの物性を評価した。結果として、セルロースⅠ型の結晶形を維持した、DSが0.4のAc-CNFが得られた。Ac-CNFの樹脂への添加によりフィルムの引張破断伸びが低下した一方で弾性率は向上し、1wt%の添加量で最も高い弾性率(1.48倍)を示した。この系にさらにPRXを添加するとその添加量の増加に伴いフィルムの引張強さおよび破断伸びを増加させることができた。一方、混練機を用いるポリエチレン(PE)とCNFとの複合化についても、CNFに予め脂肪酸処理炭酸カルシウムを吸着させることでその凝集を防ぎつつPE中への良好な分散を可能とできることが知られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水スラリー中のCNFをアセチル化により疎水化する手法をおおむね確立できたと考えている。得られた試料は疎水性UV硬化型マトリックス樹脂中にほぼ良好に分散し、補強効果を引き出すことも計画通りほぼ実現できた。その場合、普通なら耐衝撃性の低下はやむを得ないところであるが、変性ポリロタキサンの併用でそのスライディング効果によりフィルムの伸びも増大させ耐衝撃性を向上させ得たことは興味深い。一方、混練機を用いたPEとCNFの複合化においては、脂肪酸処理炭酸カルシウムが両親媒性的、すなわち界面活性剤的役割を担い、CNF同士の凝集を防ぐと共にマトリックス樹脂であるPE中にCNFをおおむね良好に分散させ得ることができ、その効果は引張試験結果において、ブランクより高い引張特性を示すという形で反映された。 以上より「(2)おおむね順調に進展している」と判断させていただいた。
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Strategy for Future Research Activity |
バイオマス度のできるだけ高い複合体の作製を意図して、疎水性UV硬化型セルロース誘導体の合成と、それをマトリックスとする化学修飾CNFを調製し複合化効果を検討する。一方で、セルロース粉末へのコハク酸エステル化、PO付加条件の適正化、界面活性剤の適用とポリオレフィン樹脂(PEやポリプロピレン(PP))への分散効果、特にPPに対する結晶化効果を評価する。
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Causes of Carryover |
UV硬化型樹脂として当初購入予定であった試薬について、メーカー側のご厚意により無償で提供いただけたこと、また、バッチ式ミキサの部品について今年度はかろうじて手持ちの分を使うだけで済み(混錬時にミキサモーターの許容限度を超える負荷をかけずに検討を進めることができたため等)、関連諸部品を新しく購入する必要がなかったことが次年度使用額の生じた主な理由である。次年度においては、予定している研究発表の会場が京都から遠く離れた九州で開催され、かつ、発表数も今年度より増えることもあり、旅費の一部として活用させていただくことを計画している。
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