2017 Fiscal Year Research-status Report
Yeast and methane fermentation system for food waste
Project/Area Number |
17K00673
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Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
古崎 康哲 大阪工業大学, 工学部, 准教授 (90454553)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | メタン発酵 / エタノール発酵 / 膜分離法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はメタン発酵の前処理としてエタノール発酵を行い、エタノールを含んだまま発酵液をメタン発酵させることが特徴で、当該年度は膜分離型メタン発酵への応用可能性を検討した。中空糸膜ユニットを用いたバイオリアクタを2組製作し、基質をエタノール化させた模擬厨芥とし(前処理系)、エタノール化を行わない基質を対照系として連続投入実験を行った。馴致を行った後、約160日間連続実験を行い、基質の投入量を段階的に増加させて、リアクタの処理能力を検討した。 前処理系では、実験条件として容積負荷6.5gVS/L・d、HRT15日においても運転が可能であったのに対し、対照系ではVFA生成による低pHにより破たんした。このことから基質をエタノール化させることにより、メタン発酵において約1.3倍の高負荷での運転が可能であった。またエタノール化系では対照系と比較して、メタン収率は1.3倍向上、バイオガス中メタン濃度17%向上、汚泥生成量1/10という結果が得られた。以上のことから膜分離メタン発酵においても基質の前処理としてのエタノール化が有効であることがわかった。 前処理としてエタノール化を行うことにより、分解が早い成分が基質全体の30%から70%に向上し、分解しやすい基質へと改質されることがわかった。このことが高負荷運転が可能となった理由の一つであると考えられる。 膜透過水BODは両系とも50mg/L以下となり、後段処理を行わなくても下水道放流可能な濃度まで下がることがわかった。 次世代シーケンサを用いた菌叢解析により、エタノール化で優占した細菌は前処理系、対照系ともにメタン発酵槽での存在割合は非常に低いことがわかり、メタン発酵ではエタノール経由の代謝はほとんどないことが示唆された。またメタン発酵槽内の細菌叢は、前処理系、対照系のみで優占する細菌が存在した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
膜分離型メタン発酵の実験事例は少なく、ファウリング等による継続不能を懸念していたが、装置の構造や膜透過水の引き抜き方を工夫するなどして運転を行うことができた。定常状態での運転結果を得ることができるとともに、ガスメータを設置して常時モニタリングを行うことで、エタノール発酵前処理による基質の生分解性の変化を把握することができた。また汚泥生成量が少なくなる成果は予想以上であった。膜透過水のBODが予想を大きく下回ったことは、膜分離型メタン発酵の優位性を示す結果であり、提案内容にプラスアルファの知見を得たと言える。 DNA濃度を指標とすることは、有意なデータを十分に得ることができなかった。これは分析手法によるものか、DNAという指標特有なものか、今後検討する必要がある。 次世代シーケンサを用いた菌叢解析ではエタノール化基質を用いた場合特有の細菌叢を確認することができた。しかし、その菌叢変化の意味するところを把握するには至らなかった。これはメタン発酵細菌の菌叢解析に関する知見がまだ十分でないこともあり、今後さらにさまざまな条件でデータを蓄積することと、幅広い文献調査が必要と考えている。 以上のことから膜分離型メタン発酵システムの構築と連続実験については想定以上の成果を得ることができた。細菌に関する視点からの知見は、データを得ることができたが、その考察を行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も膜分離法を用いたメタン発酵を行い、さらに高負荷での運転を行う予定である。昨年度は装置製作と運転ノウハウの習熟に時間がかかって行えなかったが、本年度は早い時期から運転に取り掛かり、さらに高負荷、長期間での運転特性を把握したいと考えている。 また、本法を下水汚泥と食品廃棄物の共消化に応用したいと考えている。これはわが国も含めて世界的に共消化に注目が集まっているためである。本研究で提案したエタノール化前処理を行うことで汚泥生成を大幅に減らすことができたことから、これを共消化に応用することで、下水汚泥の分解性までもを高めることが可能ではないかと考えている。過去の回分実験の結果を考慮しても十分に可能性があると考えている。 菌叢解析(メタゲノム解析)は引き続き行う。ただし、酵母などの真菌類を次世代シーケンサにかける手法はまだ十分に確立されていないため、リアルタイムPCRやプレートカウントにより酵母の消長がどうなっているかも検討したいと考えている。 メタン発酵のDNA濃度については、DNAだけにこだわらず、全細菌をリアルタイムPCRで把握するなどの手法も検討するべきだと考えている。 以上のようにエタノール発酵前処理(酵母発酵処理)の可能性を広げる、モデル化も含めて深めていくという点では提案通りの方向性で研究を進めていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
残があることを事務から聞き漏らしており、本来は本年度執行する試薬を購入できなかったため。
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Research Products
(1 results)