2017 Fiscal Year Research-status Report
Study of comprehensive management of waste and resource toward circular economy
Project/Area Number |
17K00678
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
笹尾 俊明 岩手大学, 人文社会科学部, 教授 (90322958)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 循環経済 / 廃棄物処理 / 資源管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
廃棄物処理の観点に重きが置かれた3R政策から、資源管理の視点を含んだ循環経済へと移行するためにどのような仕組みが必要かを検討することを主な目的に、本年度はEUが主導する「循環経済」の概念や関係する取り組みについて、主に文献資料を元に調査を行った。EUの循環経済では、日本の循環型社会政策のように廃棄物の適正処理・有効活用など環境分野に特化せず、経済・産業政策の一環として分野横断的な取り組みがなされ、政策ビジョンが明確・かつ広範であることなど特徴的な点が見出された。 循環経済またその移行過程において、廃棄物・資源のマテリアルリサイクルと熱回収の両立が重要であるとの立場から、資源ごみの分別収集やごみ処理有料化など廃棄物政策がごみ焼却施設におけるエネルギー回収の効率性に与える影響について、技術的要因や人口密度などを考慮して分析した。具体的には、廃棄物量と焼却能力を投入財、発電量と熱供給量を産出財とした場合の効率性スコアの計算、またその決定要因について2段階DEA(包絡分析法)による計量分析を行った。その結果、資源ごみ分別や有料化は効率性スコアには影響せず、溶融処理・24時間連続運転・運転年数の短さなどの技術的要因と人口密度の大きさが効率性スコアを上昇させることなどを明らかにした。 さらに、廃棄物のエネルギー利用が進むヨーロッパ諸国の廃棄物焼却によるエネルギー利用状況について、公表されている資料をもとに考察を行った。その結果、廃棄物処理量の約半分を焼却しているオランダ・フィンランド・スウェーデン等で、そのほとんどがエネルギー利用されていると同時に、マテリアルリサイクルの比率も高いことなどがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
EUが主導する「循環経済」の概念や関係する基本的な取り組みについては、文献調査を通じて、その主な内容を把握できた。一方で、当初平成29年度に予定していた製造業を対象とした資源生産性の実証分析については、使用できるデータの妥当性や分析対象を検討した結果、予定していた方法では業種に大きく依存した結果にしかならないと予想された。そのため、29年度は当初予定していた分析を行わずに、分析方法を再検討することとした。代わりに、研究実績の概要に記載したとおり、廃棄物政策がごみ焼却施設におけるエネルギー回収の効率性に与える影響についての計量分析を行った。分析対象は当初の予定とは異なるが、申請書の「研究が当初計画どおりに進まない時の対応」に記載した範囲での変更であり、当該分析も循環経済への転換に向けた廃棄物と資源の統合的管理に関する研究の一部を担うものである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度前半はベルギー・ブリュッセルを拠点に、EUにおける循環経済に向けた最新の政策動向や企業等の取り組みについて、文献調査や関係機関へのヒアリング調査を通じて実態の把握を行う。また、ベルギーにおける容器包装リサイクルシステムを主な具体的事例として、循環経済政策の現状と課題について、文献調査に加え、現地調査や関係する機関へのヒアリングも交えた調査を行う。これらの調査を通じて、以下で述べる計量分析を実施するために必要な循環資源の価格や数量に関するデータ収集も行う。 平成30年度後半には、EU諸国内をケーススタディとして、鉱物資源や廃プラスチック・古紙等を主な対象とした再生財市場における需要関数と供給関数を、計量経済学の手法を用いて推定し、再生財の価格決定メカニズムを明らかにする。さらに、再生財の価格や需給についての将来予測を通じて、資源価格の変動に対し柔軟な対応をするための方策について検討する。 当初平成29年度に予定していた製造業を対象とした資源生産性の実証分析については、分析方法や分析対象を再検討し、状況によっては上述の再生財やエネルギー回収に関する分析に含める形で取り扱うことも検討することとする。
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