2018 Fiscal Year Research-status Report
里山環境の人為的遷移の歴史分析ならびに野外実験にもとづく新里山創成
Project/Area Number |
17K00696
|
Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
渡辺 菊眞 高知工科大学, システム工学群, 准教授 (40554697)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
楠瀬 慶太 高知工科大学, 地域連携機構, 客員研究員 (40791786)
高木 方隆 高知工科大学, システム工学群, 教授 (50251468)
古沢 浩 高知工科大学, 環境理工学群, 教授 (20282684)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 農村形計画 / 空間構成 / 空間変遷 / 日本史学 / 民俗史 / 環境測定 / ボクセルモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
1.里山と有機的関係と保っていた時代(1950年代)における集落の空間的特質(空間構成から読み解ける性質)を、実証フィールドのある集落(高知県土佐山田町佐岡地区中後入、以下「佐岡地区中後入」)を対象に現地調査と、地図調査(国土地理院発行の航空写真+地理院地図)を行うことで明らかにした。記録内容は、集落スケールにおいては地形、街路、居住域、聖地・葬地の5項目の構成を、個別建築のスケールでは第二次世界大戦以前に建設された古民家の空間類型、特に屋敷構えを持つ農家に焦点をあてて、その類型と分布の考察をおこなった。また、視点を広げ、「佐岡地区中後入」を含む物部川流域圏中流部の屋敷構えと神社の分布、空間形式の分析も行い、「佐岡地区中後入」の特質との比較分析も行った。 2.「佐岡地区中後入」を対象に歴史文献を収集し、歴史学的調査(文献調査)と民俗学的調査(古老への聞き取り調査)から、中世~近世の地名の現地比定、大正・昭和期の里山の土地利用や屋敷地での生業の在り方などを明らかにし、記録した。「佐岡地区中後入」において、集落と里山がどのような関係性を持ちながら形成されてきたか(=里山の形成過程)を示した。同時に1の空間的特質と空間形成過程との影響関係についても示した。 3.実証フィールドの里山を対象に、ボクセルモデルを用いた落葉広葉樹林における衛星画像シミュレーションを行った。 4.「佐岡」の実証フィールドの休耕地(元棚田)を対象に昨年度作成した屋根付き気候測定装置(屋根角度、床高さが可変)にて微気候計測を行った。同時に里山林内でも微気候計測を行った。また、微気候計測している林地にて、植林放置されている杉を伐採した。今後は伐採前後で微気候数値がいかに変化するのかを比較分析する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理由 Ⅰ里山の人為的遷移過程の環境歴史学的分析記述 里山との有機的な連関が急速に衰退した時代(戦後の高度経済成長期)から現在までの里山空間の変遷、現況については、昨年に引き続き、実証フィールド近辺を対象に記録することができた。同時に歴史・民俗学的手法による里山の人為的遷移過程については文献収集が完了し、里山が豊かかりし頃(大正・昭和期)の生業や土地利用の状況などを聞き取ることができた。聞き取れた情報が膨大であり、GIS上でのデータ整理が今後の課題である。 Ⅱ実証フィールドでの介入実験 森林でのボクセルモデルを用いた環境計測手法のひとつを提示でき、また介入実験として林地の伐採を行うことができた。しかし、新たに有用植物などを栽培するに当たっては地権者への更なる土地利用の許可を得ねばならず、それは極めて困難であることが分かっている。そのため、林地内の微気候変化の分析にとどまらざるを得ない状況である。
|
Strategy for Future Research Activity |
Ⅰ里山の人為的遷移過程の環境歴史学的分析、記述 現在、「佐岡」における3集落(11の小集落を含む)の歴史環境の記録と空間的特質の分析を終えている。今年度は「佐岡」で1集落を記録し、さらに物部川流域圏の下流域での集落の空間的特質を把握することで、物部川流域圏における「佐岡」の歴史的、空間的特質とその位置づけを明らかにする。同時にそこで得られた情報をGIS上に記録する。
Ⅱ実証フィールドでの介入実験 地権者への土地利用(林地の伐採)の許可が昨年度末時期に得られ、その後に林地伐採を行った。本年度はこれまでおこなってきた伐採前の林地微気候と伐採後の林地微機構を比較分析する。また、樹木伐採後の植生変化の把握と記録も行う。
|
Causes of Carryover |
本年度に、環境実証フィールドにて介入実験を行う範囲が、当初より縮小してしまった(地権者との協議が難航したため)こと、介入実験で行う項目に変更があったことにより、実支出が減額したため。
|