2017 Fiscal Year Research-status Report
震災時に人命を守る自生食用植物の都市型圃場「防災植物園」の創造
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17K00700
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
橋田 祥子 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 客員共同研究員 (30398903)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大森 宏 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (10282691)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 防災 / 食料備蓄 / 農地 / 実験圃場 / 地域交流 / 農業振興 / 機能性作物 / 屋上農園 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は災害時に備蓄可能な植物でメンテナンスフリーな栽培種を把握するために農場と屋上において生育実験を行ない、供試栽培作物品目はサツマイモ、キクイモ、ソバ、ミニトマト、ダイズ、ショウガで、メンテナンスフリーでほとんどを天水で賄えた栽培作物品目はサツマイモとキクイモとソバ、ミニトマトは原種に近い品種の粗放栽培で、病害虫の被害が大きく裂果も多く、ショウガは天水だけでは育たず、ダイズは無農薬のため、害虫が発生し収量が少なかった。農場と屋上で生育させた植物の熱環境を測定し、作物品目間の表面温度の分散分析の結果から栽培作物品目間についてTukey HSD法で種間の放射温度に有意差が確認した。以上の結果から農地に農作物の供給のほかで防災機能やヒートアイランド緩和効果を持たせるためには栽培品目に着目し、天水だけでほぼ生育して収量確保ができて環境緩和効果も大きな芋類等の栽培種で土地被覆することが重要であることが示唆された。平成30年度には大学生に対して機能性のある野菜や果物、食料の備蓄に適する野菜や果物、必須ミネラル含有量が多い野菜や果物、農業への参加意識、将来農業に従事する場合の条件、未来の農業のあり方、新しい農業技術の知識などに関するアンケート調査を実施する。屋上や農場の実験圃場(農地)で機能性や必須栄養素を多く含む野菜や果物を栽培し、加工物の試作とそれらの記録を基に作物栽培に親しみながら防災意識や就農意識を向上させるウエブ教材を開発して情報発信と学生アンケート解析から大学と地域が農業を通じて交流する連携の形について研究し、大学が地域の社会教育や防災拠点となり農業を通じて地域を活性化させたり地域の安全性を高める方法について指針をまとめる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初大学の法面を用いて圃場を形成する予定であったが所属変更のためにフィールドが大学附属農場と大学の校舎屋上へと変更した。また研究対象植物としていた植物についても昔から自然に生えていて食用できる防災植物(日本防災植物協会:https://www.facebook.com/bowsai.plant)から災害時にカロリー源となる備蓄可能な栽培作物品目および薬用利用などが可能なハーブ類、医用利用が可能なキクイモ等の機能性野菜へと変更した。1年目の農場と屋上に整備した圃場での栽培実験結果では、農薬を使わずほぼ天水のみで生育させることが可能であったものは、サツマイモとキクイモとソバのみであった。さらに食料備蓄というカロリーベースで比較するとサツマイモが最も効果が高く、表面温度の低下を条件とするとキクイモとソバの効果が高くなった。しかし、屋上の場合はプランターで栽培したため根茎の広がりが制御できたが農場の圃場の場合は外来種であるキクイモの根茎の広がりが極端に大きく栽培後に完全に除去することが困難であることが判明し、ソバについてはある一定以上の収量確保のためには広大な土地で栽培する必要があることも明らかになった。またキクイモのように葉が立体的に層を成している栽培種の地表面温度低減効果が高い結果を得たため、圃場を立体的に形成する栽培方法の効果が課題として明らかになった。 今年度は東京大学の付属農場(東京大学大学院農学生命科学研究科附属生態調和農学機構)および大正大学地域構想研究所に所属を変更し、屋上や農場の立体圃場や栽培種ごとのの環境緩和効果をシミュレーションと実測で明らかにする。農場では備蓄に適しているサツマイモとミニトマトを栽培し、屋上では薬用や医用利用が期待できるハーブ類の栽培を検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度の栽培品目は東京大学大学院農学生命科学研究科附属生態調和農学機構内に、ミニトマト、カボチャ、ゴーヤの立体栽培の間をサツマイモとサトイモをリビングマルチとして植える圃場を形成し、東京大学農学部1号館屋上にはプランターを設置して、機能性野菜のキクイモ、薬用・医用利用できるハーブ類(ミント、タイム、ローズマリー、カモミール)、ワイルドストロベリー、果物類(イチジク、ブラックベリー、ブルーベリー、ゴールデンベリー)、ミニトマト、ゴーヤ、サツマイモ、サトイモ、等を生育させて、時系列の繁茂状況や温熱環境緩和効果の測定を実施し、芋類とミニトマトとベリー類について加工食品を試作して食料の備蓄を試みる。学生アンケートを実施して、野菜や果物の機能性について学ぶことや、食料の備蓄の必要性や、備蓄に適する野菜や果物とその保存方法、人間が生命を維持するために必要な必須ミネラル成分やその含有量が多い野菜や果物についての知識の有無を調査する。植物を生育させる場合に必要な環境条件について、既往文献調査を行ない、地域の気候条件ごとに適する栽培作物や、栽培する際に必要な環境条件についてまとめる。農業への参加意識の高さや、将来農業に従事する場合にどのような条件が優先されるか、未来の農業はどのような形で存続するのが良いのか農業の現状と課題について考えるベースとなる新しい農業技術の知識などを明らかにしてまとめて、栽培や学生アンケートの記録を基に作物栽培に親しみながら防災意識や就農意識を向上させるウエブ教材開発と情報発信を検討する。
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Causes of Carryover |
3月1日に所属が東京大学新領域創成科学研究科(客員共同研究員)から東京大学農学生命科学研究科生物測定学大森研究室(研究支援員)及び大正大学地域構想研究所へと変更に伴い事務手続きの関係で3月12日に実施した学内研究交流発表会のポスター印刷費や、3月24日~25日に開催された園芸学会への参加費、ポスター制作費、旅費の支出を公費で行うことができず実費精算することになったため次年度への繰り越しとなった。今年度、東京大学農学生命科学研究科生物測定学大森研究室における研究で屋上(東京大学農学部1号館屋上)に設置する屋上緑化資材(プランター)及び種苗の購入費の一部として使用する。
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Research Products
(2 results)