2017 Fiscal Year Research-status Report
ものづくり立国・日本の新成長に資する日本美「侘び」を表現する工業デザイン造形研究
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17K00720
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
杉本 美貴 九州大学, 芸術工学研究院, 准教授 (00635047)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森田 昌嗣 九州大学, 芸術工学研究院, 教授 (20243975)
曽我部 春香 九州大学, 芸術工学研究院, 准教授 (50437745)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 侘び / 造形 / 作為 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、日本の代表的な美意識の一つであり海外でも認知度が高い「侘び」の美意識に着目し、その造形手法を明らかにすることを目的に、①造形要素の抽出、②造形意図の抽出、③造形要素と造形意図の関係性の考察まで実施する計画を立てており、参考文献の選定・収集から始め、文献に記載されている内容の抽出と分類を実施している。合わせて、本年度に東京国立博物館で開催された「特別展 茶の湯」展、サントリー美術館で開催された「寛永の雅」展、逸翁美術館で開催された「茶の湯道具始」展にて情報収集を行い、文献調査と合わせて抽出した情報を整理している。 研究当初、造形要素の抽出に研究の主眼を置き、茶道具及び茶室の造形物を対象に、侘茶以前の唐物及び書院茶との比較観察、長さや曲率などの計測を実施予定であったが、調査を進める中で、個々の造形物の形状よりも、その造形物が作られた際の思想やコンテクストの重要性が明らかとなったため、当初計画から調査内容を見直し造形意図の抽出の比重を高くした。当初の仮説が見直されたことは本年度の研究の成果の一つと言える。そのため、利休や製作者の言説、弟子の回想録、対象となる造形物の評論や解説から造形要素と対応する造形意図の記述を抽出するために、調査内容、調査項目を修正し、改めて文献調査を進めている段階である。 現在のところ、最も重要な造形に影響を与える要素は「作為」であることが示唆されている。そこで、作為の分類、作為の方法などについて調査、分析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究当初、造形物の長さや曲率などの計測を実施予定であったが、調査を進める中で、個々の造形物の形状よりもその造形物が作られた際の思想やコンテクストの重要性が示唆された。そのため、当初計画から調査内容を見直し文献調査の比重を高くした。それに伴い、調査項目も変更したため、再度文献調査からやり直す必要があった。 このことは、進捗が遅れているというよりも、研究が進んだことによって新たな発見がもたらされ、別の調査が必要になったことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、文献調査、展覧会での情報収集によって抽出した内容を、造形意図、造形要素と造形意図の関係性について分析し、造形手法の仮説を立案する。特に、造形意図に影響を与えている思想まで掘り下げて、質的データ分析法を用いて解釈する。 そこで立案した仮設について事例となるデザイン案を考案し、三千家家元、千家十職、茶道具商(有限会社左座園他)、学芸員(裏千家茶今日庵道資料館他)、侘びに関する研究者や有識者とディスカッションし、仮説の修正を行う。 その結果から造形手法の仮説を立案し明文化する。その際、必要に応じて部分的な形状サンプルを作成する。
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Causes of Carryover |
調査を進める中で当初の仮設の見直しが必要になったため、申請時に計画していた有識者へのインタビュー調査及び造形物のプロトタイピングが実施できなかったことによって、有識者への謝金、造形物製作のためのレーザープリンター購入が遅れたことによる。 平成30年度前半に仮説の修正を終え、平成29年度に実施予定だった有識者へのインタビューと造形物のプロトタイピングのために繰り越した予算を執行する予定である。
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