2019 Fiscal Year Research-status Report
Practical Study on Universal Museum
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17K00721
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
平井 康之 九州大学, 芸術工学研究院, 教授 (10336084)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | インクルーシブ / ユニバーサル / ミュージアム / デザイン / ユーザー参加 / 障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ユニバーサルミュージアムを、年齢、性別、国籍、障がいの有無等をこえて多様な来館者の包摂が実現された博物館と定義する。その視点から国内外の複数の博物館を横断的に調査し、ユニバーサルミュージアムの課題とその解決策を明らかにすることを目的とする。具体的には、1)(知覚鑑賞)これまでの視覚中心の展示手法がもつ問題点を明確にし、視覚以外の知覚鑑賞を可能とする展示手法を構築する。2)(双方向性)同時に多様な来館者と博物館(学芸員・研究者)双方を対象としたヒアリングならびに展示鑑賞の実践プログラムを実施しながら、ニーズの間に存在するギャップや親和性を分析する。3)(社会性)評価指標をもとに博物館が自己点検や提案を実施していくことができる運用プログラムの構築を目指す。 令和元年度は、1)の視覚以外の知覚鑑賞の展示手法の可能性について、九州国立博物館展示課茂泉千尋氏、山口大学講師冨本浩一郎氏と、ハンズオンの実践とメソッドについての意見交換会を行い、国際シンポジウム開催の計画を進めた。また昨年度から、生き方のデザイン研究所と取り組んでいる鑑賞サポートツールとしての科学者人形については、視覚障がいのある人との共同制作を引き続き進めた。2)の来館者、博物館双方の視点からの客観的評価手法については、昨年度のUMM(ユニバーサルミュージアムマトリクス) 修正の検証のためにケルビングローブ美術館・博物館(グラスゴー、UK)、サイエンスミュージアム(ロンドン、UK)、ユーレイカ(バーンタ、フィンランド)の3館の海外の博物館調査を行なった。3)の自己点検できる運用プログラムの構築については、 自己点検ツールについては、UMMをベースに、デザイン提案集は、これまでに収集された事例のまとめから、人材育成プログラムは、これまでに開催したワークショップをもとにそれぞれ作成することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
国際シンポジウムは3月28日に開催予定であったが、新型コロナウイルスの影響で開催を延期した。運用プログラムの完成も含め1年延長し取り組むこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進には、本研究で蓄積された研究成果を、合理的配慮の社会的機運の中で貢献できるような方策が必要である。その中心となるのは、本研究メンバー、研究協力者で結成されたユニバーサルミュージアムネットワークである。これからも学会活動、市民向けセミナーやワークショップなどを通じユニバーサルミュージアムを発信し、さらなるネットワークの拡充を目指すことが挙げられる。 そして具体的な方策としては、既存の博物館と新規の博物館に分けて考えることができる。 既存の博物館においては、合理的配慮の展開によって、「多様な来館者に対する方策」の認知度は高まっている。しかし、その「対話を行う」という仕組みは評価できるが、「多様な来館者に対する方策」の実現について各館が対応できる範囲が、人的、経済的リソースなどによって限られている。しかしガイドラインによる日常的な自己点検の取り組みは、各館で容易に行えるようにさらに普及すべきである。また「多様な来館者に対する方策」事例集作成が今後必要な取り組みであると考える。その事例集は、博物館スタッフの視点に立つ必要があり、人的、経済的リソースに応じた内容でなければ浸透しないであろう。 新規の博物館においては、今回の科研費では福岡市科学館の取り組みへの貢献を行うことができたが、その他の博物館との取り組みについては実現には至らなかった。最大の課題は開館準備時の人的、経済的リソースの不足であり、どこの新規博物館でも起こっている状況である。よって新規博物館については、合理的配慮を受けた形で、複数の官庁を横断する法制化が必要であると考える。それは情報面を含むアクセスから鑑賞までトータルな来館者サービスの視点で策定されなければならないであろう。 以上の内容から、今後の研究の推進として、本研究で蓄積された研究成果を上記の方向性に貢献できるように継続することを方策とする。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、国際シンポジウムの開催計画が、2月開催から3月開催に遅れたこと、そして新型コロナウイルスの影響により3月28日の開催が決まって準備していたにも関わらず同シンポジウムが延期になったことと、さらに結果を反映する予定だった運用プログラムの完成が遅れたためであり、使用計画に関しては、延期になった国際シンポジウムの開催とその結果を反映する運営プログラムの完成を計画している。
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Research Products
(2 results)