2021 Fiscal Year Research-status Report
アノニマスデザインの知見を応用した臥床担がん患者の病衣デザインの研究
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17K00726
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Research Institution | Shizuoka University of Art and Culture |
Principal Investigator |
藤井 尚子 静岡文化芸術大学, デザイン学部, 教授 (30511977)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 病衣(下衣) / kaidangku / アノニマスデザイン / デザイン倫理 / デザインとメンタルヘルス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、臥床患者の療養生活で生じる種々の課題のうち、特に従来の病衣(下衣)構造に起因する身体的・精神的負担の軽減に資する下衣のデザインについて、従来の既製服などの構造や形態を改造する考え方から離れ、既製服以前の衣服構造および形態に着目し、それらを手掛かりに考えていくこととした。この、既製服以前の衣服構造および形態を、本研究では「アノニマスデザイン」と定義し、実際の現場への提案につなげることを目的としている。本研究におけるアノニマスデザインと考えられる下衣には、種々の民族衣装や、いわゆる「野良着」といった日常的に着用する労働着などを想定した。そのなかから、病衣にふさわしいパンツ形状で、筒状や前開き型の変形となる構造を持つものとして、中国の古代よりある袴の一種で、今日では中国・地方部の幼児が着用している、いわゆる「股割れズボン」と呼ばれる伝統的なパンツの原型となっている「開襠■(■は示偏に庫」に着目している。 2019年の調査・2020年の国際会議での口頭発表を行なった開襠■調査の内容をまとめた査読論文が『美術設計研究 2021年第2期 』(北京服装学院(中国) 2021年5月、36ページから43ページ)に掲載された。 また、これまでの開襠■の調査より「円形式構造」と「半円形式構造」の二形態が、臥床状態での排泄介助時に患者が感じる身体的・精神的負担を軽減する構造と考え、今年度はこれらをもとに試作を制作した。試作をとおして臥床状態での着用に際のもたつきや捲れ上がりのほか、脱着介助の複雑さなどの課題が明らかになった。なお、研究として看護・介護者や可能であれば臥床患者の方への実装実験や聞き取りも行わなければならないところであるが、現状の新型コロナウィルス感染症に伴う制約から実施できずにおり、使用者にとって適した素材や構造などの改善の検討が必要な状況である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請当初、2020年度を最終年度とし、実装実験をふまえた最終的な提案を行う予定であった。しかし、新型コロナウィルス感染症の影響により研究協力者との連携が難しく、計画の中断、当初計画よりも著しく進捗が遅れている。途中経過の論文発表を行えている点を考慮し、「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
一昨年から連続して研究延長が認められたため、2020年度当初計画のとおり、実装実験や聞き取りを行うことを目指す。ただし、現在までも新型コロナウィルス感染症による種々の影響が及んでいることを踏まえ、部外者との関わりに消極的にならざるを得ない環境である病院や介護施設等だけでなく、在宅療養や介護に関わる方の協力を仰ぎながら、個人への実装実験および聞き取りの可能性を検討し、対象者を再考していく予定である。その際には、病衣試作もよりパーソナルなものとなる可能性があるため、病衣プロトタイプの制作における研究協力者についても再考する。 当該研究の着地点は、今後、医療機関などでの研究協力が可能になった場合を見越し、実験衣・使用方法などの手引きを含むプロポーザルの作成を目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症拡大につき研究が進捗しなかったため、特に旅費や人件費を使用しなかったため。
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