2018 Fiscal Year Research-status Report
デザインにおける「パクリ」の発生要因とその抑止:「パクリ」と模倣・剽窃の差異
Project/Area Number |
17K00730
|
Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
藤本 貴之 東洋大学, 総合情報学部, 教授 (20373053)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | パクリ / デザイン / 知的財産権 / 盗作 / 盗用 / 剽窃 / ネット炎上 / アナログとデジタル |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は国内外の学会で10編以上の研究成果・論文を発表することができただけでなく、単著「パクリの技法」(オーム社)を2019年2月に刊行することができた。 それら研究成果を通して、本研究課題の主要テーマである「パクリ」という現象がなぜ発生するのか、またその手法についても具体的で網羅的な検討が可能になりつつある。デジタルデザイン時代の今日、ツールの高度化と手法の簡易化に伴い、コピーアンドペースト(いわゆるコピペ)やネット検索による模倣先の探索などによる「パクリ」が頻発し、それが今日のパクリ問題の検討課題の一つになっている。一方で、はっきりとした要因は未だ明らかではないか、同じようにコピペが容易なデジタルコンテンツやネット検索で探知が可能なコンテンツであっても、「パクられやすいコンテンツ」と「パクられづらいコンテンツ」が存在していることも事実である。これは「問題化するパクリ」と「問題化しないパクリ」とも言い換えることができる。 「パクられやすいデザイン」と「パクられづらいデザイン」について具体的な比較研究を進めるために、昨年度に立てた「『パクられづらいデザイン』とは、意匠の複雑さや難解なプログラム技術というよりも、むしろ利用者や享受者に対しての『アナログ的な実感』の有無にあるのではないか」という仮説の検証を、様々な事例開発から行うことができた。 例えば、本研究では、そのような『アナログ的な実感』の有無に基づくデザインを「Analog in Digital:AoD」と名付け、パクられづらさを反映させた新しいデザイン手法の一つとして研究を進めている。 また、それと並行して、パクリの歴史や様々な事例研究に基づき、知的財産権(本年改正された「著作権法」を含む)についての情報収集や分析も進めている。(その成果は著書「パクリの技法」において言及)
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2018年度は、大きく2つの方向で研究業績を出すことができた。 まず第一に、2017年度に推進した「第一段階のデザイン実作業とその分析」をさらに推し進めた第二段階として「より具体的で実際的なデザイン手法の開発と評価」である。この方向では、国際会議を中心に国内外の学会において、10編以上の論文を発表することができた。具体的には、3rd International Conference on Control Engineering and Artificial Intelligence(USA)、International Conference on Science & Technology Research(タイ)、The 2nd International Conference on Applied Cognitive Computing (USA)、1st International Conference on Interaction Design and Digital Creation / Computing (日本)などの国際会議において英語による成果公開をすることができ、国内学会では、電子情報通信学会・教育工学研究会、同情報ネットワーク研究会などで複数の論文発表を行うことができた。 第二の方向性は、よりジェネラルな視点による研究成果である。 「パクリ」という言葉と概念の理解が必ずしも十分であるとは言えない今日、専門的な研究成果だけではなく、ジェネラルな理解を深めるための研究も不可欠であると考える。この方向では、2019年1月に施行された「改正著作権法」を踏まえ、コンテンツやデザイン等におけるパクリの歴史や事例から、パクリについての啓蒙的な情報発信を含めたジェネラルな理解のための網羅的な単著の書籍「パクリの技法」(オーム社)を2019年2月に刊行することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
2018年度は、実際のデザインや設計・開発・分析を通して、デジタルデザイン時代の「パクリ」の発生要因とその抑止手法について多くの業績を出すことができた。合わせて、パクリに対する啓蒙を含めたジェネラルな理解のための単著の書籍「パクリの技法」(オーム社)を執筆・出版できたことは、本研究課題の本年度の最大の成果の一つと言える。今後(2019年度)は、これまでの2年間の成果を踏まえた上で、「パクリ」という現象について、より具体的な手法と多様で広範な視点から明らかにしてゆく。 よって、本研究課題が最終年度である本年度の推進方策は「具体的なデザインおよびコンテンツ作成手法」を通してパクリについて理解と分析、抑止手法を明らかにすること。あわせて、啓蒙的な情報発信や理解を含めた、パクリ全般に対する網羅的でジェネラルな理解のために体型的な研究成果をまとめ、社会にその成果を還元してゆくことである。 なお、2019年4月には、本研究課題にも関わる国際会議IIAI-International Conference on Applied Informatics and Media Designをカリフォルニア州立大学ベーカーズフィールド校で開催し、研究成果を発表する。また、昨年に引き続き、2nd International Conference on Interaction Design and Digital Creation / Computing (IDDC 2019)を2019年7月に富山県で開催する予定である。研究の成果を積極的に公表してゆくことで、「パクリ研究」を深めるだけでなく、「パクリ問題」および「パクリ研究」への関心も高められるようにつとめたい。
|
Causes of Carryover |
2018年度は9月より海外研究としてアメリカ・カリフォルニア州立大学ベーカーズフィールド校に滞在し、アメリカで研究を推進していた。そのため、海外では経費が利用しづらい点がいくつかあったため、残額と次年度への繰越金額が発生した。2019年度は2018年度に海外にいて十分に取り組むことができなかった国内での事案や活動について積極的に行うため、残額は2019年度で利用する予定である。
|
Research Products
(10 results)