2018 Fiscal Year Research-status Report
Formulation of Curve Segments Composing Japanese Landscapes
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17K00741
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
鈴木 利友 武庫川女子大学, 生活環境学部, 教授 (10388803)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 等間隔 / 点列 / 開多角形 / 曲線あてはめ / 定式化 / 非対称 / 線分 / 頂点 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、明治時代に建築された木造住宅の屋根で使用されていた手づくりの桟瓦を研究対象とした。前年度得られたキーラインは不等辺開多角形であり、頂点の間隔は不均一であった。この間隔のばらつきは、主に割れや欠け等といった個々の桟瓦の局所的な凸凹の影響によるものであり、曲線の大局的な性質とは無関係である。一方これらの頂点から得られる点列に直接曲線あてはめを施すと、間隔のばらつきがもたらす点列の粗密が大局的な定式化に影響してしまい、適切な定式化が困難なことが判明した。そこでこの不等辺開多角形を、桟瓦の実寸と、重なりの非対称性を考慮した方法で、等辺開多角形に近似し、曲線あてはめに適した等間隔の点列に置き換えた。近似後の点列に再度主成分分析を施すことにより、異なる桟瓦の間の位置や向きのばらつきがより小さい座標系に変換できることを明らかにした。 一方、曲線あてはめで用いられる定式化された曲線は、変曲点に関して対称なものが多いが、桟瓦のキーラインは明らかに左右非対称である。そのためキーライン全体を1つの数式のみで定式化することは難しく、少なくとも2本のセグメントに分割し、それぞれのセグメントを定式化する必要があることが推察できた。そこで、等辺開多角形近似で得られた点列の中から、点列に近似する曲線における大局的な変曲点を推定する方法を、Ramer-Douglas-Peuckerアルゴリズムから着想を得て検討するとともに、その方法を用いた解析を試みた。その結果、各桟瓦のキーラインにあてはまる曲線自体に、一定のばらつきがあると推察できた一方で、開多角形の局所的な凹凸が結果に影響を与えている可能性があり、今後さらなる検討が必要と考えられた。 さらに、2本の対数型美的曲線セグメントを接続して曲線あてはめを行うことを想定し、互いに相似な対数型美的曲線が曲率連続となる条件を、方向角に着目して検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は桟瓦がもつ曲線セグメントの定式化を試みる予定であった。しかし「研究実績の概要」で述べた通り、(1)前年度得られたキーラインにそのまま曲線あてはめを施すと、曲線の大局的な性質とは無関係な点列の粗密が、大局的な定式化に影響してしまう問題、および(2)キーライン全体を1つの数式のみで定式化することが難しい問題が生じた。(1)を解決するために等辺開多角形近似、(2)を解決するためにRamer-Douglas-Peuckerアルゴリズムに着想を得た大局的な変曲点の推定を行う必要が生じた。その結果、曲線セグメントの定式化は予定より遅れることになった。 しかし一方で(1)(2)に関する検討を通して、曲線あてはめに適した等間隔な点列への近似方法、およびRamer-Douglas-Peuckerアルゴリズムの変曲点推定への応用という、今後の研究でも充分活用可能な、想定以上の研究成果が得られたと考えている。さらに(2)に関連して、互いに相似な対数型美的曲線が曲率連続となる条件を、方向角に着目して検討することもできた。 以上を総合的に考慮すると、おおむね順調に進展していると、自己評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、大局的な変曲点の推定方法の改良を試みるとともに、桟瓦のキーラインの定式化を目指す。さらに、日本らしい景観を構成する曲線セグメントのうち、大スケールのセグメントをもつ典型的事例として、風景画に描かれている風景等にみられる曲線セグメントの定式化を試みる。定式化にあたっては、風景画を電子化した画像データを活用するものとし、そのピクセルデータから曲線セグメントを記述する点列を求める。その点列に対し、曲線セグメントの定式化を行う。
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Causes of Carryover |
研究の進捗状況の変化に対応し購入することになった備品費に充当するため、200,000円の前倒し支払請求を行い、199,364円を使用した。残り636円が未使用となり、次年度使用額が生じた。次年度は、支払請求額と合わせた500,636円を、研究の遂行に必要な物品等の購入費用、研究成果発表や情報収集に必要な学会参加費や研究出張費、および論文投稿に必要な論文投稿料や英文校閲料等として使用する計画である。
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