2019 Fiscal Year Research-status Report
Design of Wing in Ground Effect Vehicle for High Flight Stability
Project/Area Number |
17K00744
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Research Institution | Kurume Institute of Technology |
Principal Investigator |
東 大輔 久留米工業大学, 工学部, 教授 (20461543)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 航空機デザイン / 地面効果 / 飛行安定性 / 境界層制御 / 海洋交通 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度までのスケールモデルのテストフライトで大きな課題として残っていたのが離陸後に機体がピッチング方向やロール方向に回転し、失速(墜落)する現象である。この現象の改善に尾翼が効果的でることは風洞試験とテストフライトで確認していたものの、デザインの新規性が損なわれることや、既存の港湾施設に入港しづらいなどの課題があるため、2019年度は尾翼を用いずに飛行安定性を高める主翼上面の新たな空力デバイスの研究を進めた。2018年度の研究で空力デバイスが発生すべきローリングモーメントやピッチングモーメントの目標値を設定できていたため、その要件を満たす空力デバイスの検討を風洞試験で行った。具体的にはSTOL機(Short Takeoff and Landing Airplane)などに用いられる境界層制御装置に着目し、主翼上面で歯車状の柱を回転させ、翼面の流れを制御することでピッチングモーメントやローリングモーメントを発生する空力デバイスの検討を進めた。 提案した空力デバイスを両側の主翼で作動すると飛行を安定させる方向のピッチングモーメントが発生できたものの、ロール方向については、ロール角の付いた飛行状態で片側の翼のみ空力デバイスを作動させても安定方向のローリングモーメントを発生することができず、2019年度の目標であったピッチングモーメントとローリングモーメントの両方を安定化する新たな空力デバイスの実現はできなかった。ただ、逆効果でもローリングモーメントに変化が見られたことは、安定方向のローリングモーメントを発生する可能性もあることを示しており、2020年度はより詳細に空力デバイスの検討を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2019年度までに尾翼に頼らずに安定した飛行を実現する主翼上面の新たな空力デバイスの検討を終え、テストフライトで実証試験を行う予定であったが、残念ながら要求を満たす空力デバイスの方式、形状、設置位置などを正確に見出すことができなかった。その理由の一つとして、2019年度に提案したデバイスは歯車上の柱を回転させるものであり、その機構を空力シミュレーション(CFD)で再現するのが困難で、詳細な流れの分析が行えなかったことが挙げられる。次年度は機構をシンプルにするなどの工夫をして空力シミュレーションの検討を進めるとともに、風洞試験での流れの可視化も進めて主翼上面の流れの構造を詳細に調査し、要求を満たす新たな空力デバイスの研究を進める。 また、もう一つの課題である国内外の海上輸送の市場調査についても十分に実施できてたとは言えず、運用ビジネスの検討や運航海域、飛行速度などの具体な検討を進めるには至らなかった。2020年度は国内外の海洋交通や近距離航空交通の調査をしっかりと進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、風洞試験で主翼上面や空力デバイス周辺の流れの可視化を十分に行い、流れの構造を詳細に分析して空力デバイスの最適方式、形状、設置位置を確定する。また、テストフライトによる実証試験も十分に行い、未来を感じる斬新さと安定した飛行を両立する小型航空機のデザイン提案を行う。 さらに、九州周辺のみならず、可能であれば海外の近距離(内海)海洋交通の市場調査を十分に行い、通勤や通学、レジャーなどに用いる新たな海洋交通サービスの提案もまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
2019年度は、デザインの新規性を損なう尾翼を用いずに飛行安定性を高める主翼上面の新たな空力デバイスの風洞試験に時間を要してしまい、当初計画をしていたスケールモデルによるフライトテストを行うことができなかった。そのため、テストモデルに搭載する予定であったセンサ、アクチュエータ、制御システムなどの購入もできず、実支出額が当初計画よりも少なくなってしまった。ただ、今年度の研究で、提案する空力デバイスが飛行安定性を高めるピッチングモーメントやローリングモーメントを発生する可能性を示すことができたため、次年度はテストモデルによるフライトテストを繰り返し、斬新なデザインを実現する新たな空力デバイスの提案をまとめる予定である。 また、上記理由に加え、2月に端を発する新型コロナウィルスの影響で、今年度に予定していた天草地方や有明海をはじめとする九州近海の国内調査や、交通先進国である欧米諸国への現地調査も行えなかった。次年度はコロナウィルスの感染拡大に十分に配慮しつつ、九州近海や欧米諸国の近距離海洋交通の現地調査を実施し、本事業で提案する地面効果翼機を用いた新たなモビリティサービスデザインの提案もまとめる予定である。
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