2018 Fiscal Year Research-status Report
台湾原住民族の「遊び仕事」が内包する自然共生行動の解明とサブシステンスの検討
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17K00762
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
三橋 俊雄 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 研究員 (60239291)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大場 修 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (20137128)
田中 和博 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (70155117)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 台湾原住民 / 遊び仕事 / 狩猟文化 / 自然共生 / サブシステンス / 民族自立 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、台湾原住民Taromak族の狩猟・植物利用・禁忌・石板家屋などに関わる生活文化的側面に着目して民俗学的視角から現地調査を実施し、「遊び仕事」が内包する自然共生的行動・共同体的規範、エスニック・アイデンティティの象徴性、自然信仰・祖霊信仰と融合した自然中心主義的世界観などについての実相を探り、生活行動に組み込まれたサブシステンス性など、文化の基層としての「遊び仕事」の今日的意味・役割について明らかにする。 29年度は、Taromak族における狩猟の実態を調査・整理し、狩猟プロセスの中で実行されてきた山霊・祖霊・猟物霊に対するAsalisi(禁忌・呪術・儀礼)行為や、猟肉を切り分け部族内で分配する共同体的規範、さらには、エスニック・アイデンティティや民族自立意識の高揚など、狩猟という「遊び仕事」が内包する精神性や精神的共同性について考察した。 また、タロマク族にとって民族自立の象徴である石板家屋に着目し、旧部落Capaliwaにおける石板家屋の実測調査や室内空間の構造、かつて行われた「室内葬」などにみる精神的要素、Taromak族石板家屋再建運動に関わる日本統治時代から戦後の原住民政策までの歴史的背景などについて考察した。 さらに、狩猟に関する歴史的変遷について、日本統治時代・戦後・現在の約100年にわたる時代比較を、佐々木高明によるルカイ族狩猟儀礼調査(1972)、番族慣習調査報告書(1922)、高砂族調査報告書(1937)、高砂族調査書 (1938)などの民族史資料を繙き検討した。加えて「後狩詞記(柳田国男、1909)」より、明治期の九州山村で行われた狩猟に関する記述を通して、台湾と日本における狩猟の様態を比較し、時代や空間を越えて狩猟文化が内包してきた普遍的な特質について考究した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の現地調査は2014年から2018年まで5年間にわたって重ねられ、本研究担当者と原住民Taromak族との信頼関係は築かれており、調査対象者も、頭目、村長、村長経験者、狩猟経験豊富な高齢者に加えて、将来のTaromak族文化を担っていくべき30代、40代の若者からも、狩猟に関わる身体的・精神的内実について聞き取ることができた。本研究の調査者が台湾留学生のため、地元原住民とのコミュニケーションや関連文献の中国語の検索・入手、調査データの確認作業などもできている。
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Strategy for Future Research Activity |
31年度の研究では、「遊び仕事」が内包するエスニック・アイデンティティの象徴的意味、ゲマインシャフト的な社会維持機能、日常生活行動に取り込まれたサブシステンス性、自然信仰・祖霊信仰と融合した自然中心主義的世界観などの追加調査並びに研究成果を整理し、また、国立台東大学の台湾原住民研究・劉炯錫教授、国立雲林科技大学の地域研究・黄世輝教授らとの協議を通して、文化の基層としての「遊び仕事」の今日的意義・役割についてまとめていく。
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Causes of Carryover |
調査回数を減らし、インターネットでの情報収集をした。 歴史研究を文献調査により行った。 31年度の調査旅費に充てる。
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Research Products
(3 results)