2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K00765
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Research Institution | Okayama Prefectural University |
Principal Investigator |
柏 まり 岡山県立大学, 保健福祉学部, 准教授 (30373145)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 和順 佛教大学, 教育学部, 教授 (10413436)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 子育て支援 / 祖父母 / 母親の育児負担 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,ワーク・ライフ・バランス(以下,WLB)の重要性が高まり,ますますその必要性が増すと予想される子育て支援対策の中でも祖父母の育児支援に焦点化し,祖父母を対象とした育児支援の現状と課題を顕在化し,祖父母力醸成プログラムを開発・実施するものである。従来の子育て支援策は,母親支援及び父親の育児参加の推進など子育て家庭への支援が主流である。実際には父親の就労状況は厳しく,家庭内の努力だけでは母親の孤立化や育児負担の問題は解消されていない。子育て家庭を支える共助的支援の担い手として子育て家庭と祖父母の関係を繋ぎ,祖父母が育児場面で活躍できる「祖父母力醸成プログラム」を開発することは,子育ての社会化が求められている今日,喫緊の課題であり,男女共同参画社会の実現,WLB推進の一助となる。 上記の目的を果たす手がかりとして,A県内地域子育て支援拠点施設を対象とした祖父母の育児支援の実情を把握する調査を実施し,課題の顕在化を試みた。A県内における地域子育て拠点施設176拠点を対象に実施した調査(回収率31.3%)において,祖父母参加型の子育て支援事業を実施している支援拠点は,約14.5%であり,今後予定している施設を含めても祖父母参加型の子育て支援事業は低調であることが明らかとなった。一方,祖父母による子育て支援の必要性については,「とても必要」29.2%,「やや必要」41.7%,「どちらでもない」29.2%,「あまり必要ない」,「全く必要ない」は共に0%であり,子育て支援拠点における祖父母参加型の子育て支援事業に関する必要性と実施状況には乖離が生じていることが顕在化された。 子育て支援拠点における祖父母参加型の子育て支援事業を実施する上での困難性については,祖父母の参加の困難性,子育て支援拠点スタッフの専門知識や技術の習得の難しさが関連していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
子育て支援拠点施設における祖父母参加型の育児支援の実施状況は低調で,継続的に実施するには困難性があることが明らかとなった。子育て家庭の父親・母親と祖父母との子育て意識に関する世代間格差は顕著であり,祖父母を対象とした子育て支援の必要性も示唆されている。これらの研究成果を手がかりとして,現在,祖父母力醸成プログラムの開発に着手しているところである。具体的には,子育てにおける祖父母力活用の意義や子どもの育ちに与える影響等について理解を深めることを目的とした「子育て家庭(父親・母親)を対象とした子育て講座の実施」,子育て支援拠点スタッフの知識・技術の向上を目的とした「子育て支援拠点スタッフ研修会の実施」について検討を重ねている。 昨年度は,西日本豪雨の影響により祖父母参加型の子育て支援プログラムの継続的実施が困難になり,予期せぬ状況が生じたため祖父母参加型の子育て支援プログラムの実践・検討については一部遅れが生じているが,子育て支援拠点スタッフとの連携を図りながら着手しているところである。予定していた先進国事例の調査についても影響があり,実施が延期されていたが,現地コーディネーターとの調整により現在は順調に進展している。 今後,速やかに研究に着手するとともに,研究成果についても学会発表及び投稿により独善的な研究にならないように配慮し,社会的に意義のある研究になるように努める。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,調査結果をもとに子育て支援拠点における「祖父母の育児支援」の役割について理論化するとともに,保育施設において祖父母を対象とした育児支援プログラムの実施・検討を行い,「孤育て」を解消する祖父母力醸成プログラムを開発する。祖父母力醸成プログラムについては,世代間格差を是正するコーホート・スタディグループを結成し,プログラム内容の改善を目指す。さらに,顕在化された世代間格差に関する課題解決を目指し,祖父母力醸成に関するQ&A及び子育て家庭と祖父母を繋ぐリーフレットレット『祖父母力醸成プログラム』を作成し,関係園・教諭等に配布。子育て支援の取組みの中で,祖父母の育児支援の重要性を伝えるための講演会を実施する。 また,先進事例の調査を実施し,内閣府による世論調査における実態との整合性を図ることで,わが国におけるWLB研究の枠組みを構築を目指す。
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Causes of Carryover |
前年度実施予定であった先進国事例の調査が,西日本豪雨による被災者支援活動及び復興支援の取り組み等の影響により実施困難になったため,次年度使用額が生じることとなった。今年度に予定している先進国調査を実施し,先進国事例内容の分析を速やかに行うと共に,調査結果については学会での発表に努める。 これまで実施していた質問紙調査の内容を精査し,子育て支援拠点における全国調査を実施し,「祖父母力醸成」に寄与する実施プログラムの開発を進める。今後,開発された「祖父母力醸成プログラム」については,顕在化された世代間格差に関する課題解決を目指し,祖父母力醸成に関するQ&A及び子育て家庭と祖父母を繋ぐリーフレットレット『祖父母力醸成プログラム』を作成し,関係各所への配布し,祖父母の育児支援の重要性を伝える取り組みを行う。
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