2018 Fiscal Year Research-status Report
睡眠と食習慣に焦点をあてた精神神経疾患モデルの病態解明と新規治療法の開発
Project/Area Number |
17K00768
|
Research Institution | Tohoku Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
八百板 富紀枝 東北医科薬科大学, 薬学部, 講師 (00382672)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | ヒスチジン脱炭酸酵素 / 断眠ストレス / ヒスタミン / 咀嚼 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、離乳後のマウスに睡眠剥奪ストレスを繰り返し負荷すること並びに粉末食で飼育することにより、睡眠や食習慣を反映させた精神神経疾患の病態動物モデルを作製し、いくつかの情動行動障害が引き起こされることを見出している。その中でも、本研究においては低不安行動に着目し、特にヒスタミン神経系の関与について検討を行っている。平成29年度の検討では、ヒスタミンH1受容体遮断薬の投与下、睡眠剥奪ストレス(断続的断眠ストレス)を負荷したことにより発現する低不安行動が改善され、さらに長期粉末食飼育によって発現する低不安行動に対しては改善作用を示さないことを明らかにした。これに続き平成30年度は、断続的断眠ストレスによって発現する低不安行動について、H1受容体以外のH2、H3及びH4受容体遮断薬の効果について検討を行った。また、昨年度未着手の生化学的な検討として、ヒスタミン生合成酵素であるヒスチジン脱炭酸酵素(HDC)の遺伝子及びタンパク質の発現量について検討を行った。 具体的な成果として、H3受容体遮断薬の投与は、断続的断眠ストレス負荷による低不安行動を改善したが、H2及びH4受容体遮断薬を投与したことによる改善作用は認められなかった。さらに、断続的断眠ストレス負荷群では、非ストレス群と比較したとき有意なHDC発現量の増加が認められたが、長期粉末食飼育群では固形食飼育群と比較したがそのような差は認められなかった。 以上の成果から、断続的断眠ストレス負荷による低不安行動は、視床下部におけるHDC発現量の増加に伴い産生されたヒスタミンが、H1及びH3受容体を刺激した結果発現する可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
断続的断眠ストレス及び長期粉末食飼育の検討においては、それぞれ、ddY系マウス及びBalb/c系マウスを使用している。ddY系マウスを使用した検討は順調に進展したが、Balb/c系マウスの検討はあまり進まなかった。しかし、使用する薬物は共通している部分もあるため、ddY系マウスの実験で得られた用量設定は、Balb/c系マウスで行なう実験に大いに生かすことができると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き、行動実験、特にBalb/c系マウスを使用した長期粉末食飼育の検討を進めていく予定である。すなわち、H2~H4受容体遮断薬投与の検討を行なう。これまでの成果から、脳内のヒスタミン量の増減が低不安行動の発現に関与している可能性が示唆される。従って、今後はHDCのみならず、ヒスタミン代謝酵素の発現量についても検討する予定である。
|
Causes of Carryover |
平成30年度の実験に使用したddY系マウスの単価が、Balb/c系マウスよりも安価であること並びに実験の進行状況と照らし合わせて購入を見送った抗体や薬品があることから残金が生じた。 平成31年度は、主にBalb/c系マウスを使用した実験を行う予定であり、さらに早期に抗体や薬品などを購入することから計画通りに使用できる。
|