2017 Fiscal Year Research-status Report
中世台湾、琉球の海上交易品赤の色材(料)に関する研究
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17K00769
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Research Institution | Koriyama Women's University |
Principal Investigator |
難波 めぐみ 郡山女子大学, 家政学部, 教授 (00326761)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石原 正道 郡山女子大学, 家政学部, 准教授 (10347940)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 中世の色 / アジア海上交易 / 色材のルート / 顔料 / 日本の染色文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、琉球王朝における赤の色材(料)と台湾の赤の色材(料)の活用状況を調査し、中世の海上交易品としての赤の色材(料)の伝来ルートから、中世の色を明らかとすることを目的に、平成29年度は以下4項目について結果が得られた。 (1)赤外線分光分析の実施。当初直ぐに分析データを取得する予定で進めていたが、申請者所蔵の「古紅型」試料が現在までの蛍光X線分析及び年代測定、類似試料からの写真照合による研究分析を進める中で、国宝に近い非常に貴重な試料であると判断にいたったことから、破壊分析の赤外線分光分析を実施することができない状態となった。そのため、分析手法の再調査に取り組み現在新たな手法の導入を進めている。(2)台湾の染色文化の調査。16世紀にオランダの東インド会社の交易拠点として大きく発展し、その時に、オランダからもたらされた植物が台湾全土に根付き栽培され、交易品としても扱われたこと。また、染色の原材料の紅花や蘇芳などについては、台湾での栽培はされておらず、スペインやイスラエルからの輸入で賄われていること。こうした輸入の形態は16世紀以降安定的にもたらされており、アジアでも大きなハブ港としての役割を裏付けるものであったことを明らかとした。(3)沖縄紅型に使用されている色材(料)の調査・分析。紅型に臙脂やプルシアンブルー(ベロ藍)が使用されていたことが明らかとなったことで、プルシアンブルーの開発が1704年にドイツであることから、使用年代を明らかとする新たな調査項目を得ることができた。(4)研究分担者は、色材の候補と考えられる顔料に含まれる元素の一覧作成に取り組み、蛍光X線分析により得られたデータから、使用されている色材の一部を特定することができた。これにより、色材(料)を判断する資料として有効的に活用することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度当初計画の赤外線分光分析の分析に至らなかった。原因は、申請者所蔵の「古紅型」試料が現在までの蛍光X線分析及び年代測定、類似試料からの写真照合による研究分析を進めるうちに、国宝に近い非常に貴重な試料である可能性が高まったことで、破壊分析の赤外線分光分析を実施することができない状態となったことによる。その後、分析手法の再調査に取り組み現在新たな手法の導入を進めている。また、台湾、沖縄の染色文化の究明にも取り組み有用な情報を得ることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画通り実施していく。平成30年度は、1)沖縄染色文化の究明、2)台湾海上交易調査(標本の収集)、3)科学的分析手法の導入及び分析、4)研究成果発表、5)オープンアクセス化を目指し、中世海上の交易品に含まれる色材(料)調査から日本の染色文化を明らかとしていく。
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Causes of Carryover |
(理由) 当初予定していた科学的分析手法による分析では、貴重な試料を破壊することになることから、次年度使用額が生じることとなった。すでに新たな分析法に対応しており、平成30年度合算として分析費用に充てる。 (使用計画) 平成29、30年度経費合算し、調査手法の導入を進めている。平成29年度未使用額を有効的に活用予定である。
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