2019 Fiscal Year Research-status Report
A 40-year follow-up study of family structure and intergenerational relationship on returning home of married child in a rural area in Japan
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17K00770
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Research Institution | Wayo Women's University |
Principal Investigator |
佐藤 宏子 和洋女子大学, 家政学部, 教授 (60165818)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 追跡研究 / 農村家族 / 直系家族 / 世帯形成 / 世代更新 / 結婚コーホート |
Outline of Annual Research Achievements |
調査対象者239人を1945~54年に結婚した「MC-1」、1955~64年に結婚した「MC-2」、1965~79年に結婚した「MC-3」の3つの結婚コーホートに分類し、世帯形成の推移、次世代更新率、世帯形成の経路、世代更新に寄与した因子について分析し、次の5点を明らかにした。 (1)2014年の次世代更新率は、「MC-1」が70.1%、「MC-2」が37.9%、「MC-3」が26.0%であり、「MC-1」と比較して結婚時期の遅い「MC-2」と「MC-3」の次世代更新率は有意に低い。(2)「MC-1」では4時点を通して既婚子との同居を継続した世帯、32年間に次世代を更新した世帯が60%弱を占めているが、「MC-3」では4時点を通して同居子が未婚のままで、次世代形成が停滞している世帯の割合が高く、世代更新の水準が大幅に低下している。(3)3つの結婚コーホート及び世帯形成の4時点のデータを用いて二元配置分散分析を行った結果、3つの結婚コーホート間には、「次世代更新」「更新困難」「更新未確定」の時間的経過による変化に全体として有意な差がみられた。さらに多重比較の結果、「MC-1」と「MC-2」、「MC-1」と「MC-3」の間に有意差が認められた。(4)結婚時期が遅いコーホートほど「再同居」によって、次世代更新を実現した割合が高く、「MC-3」では次世代更新した世帯の25.0%を占めている。(5)結婚コーホートの「MC-1」は、2005年を除いて有意に次世代更新を進める要因であった。また、結婚コーホート以外の独立変数のなかで世代更新に有意に寄与する因子は、93年、05年での「夫の出身地」、93年、05年、14年での「農業継承期待」、93年での「世帯職業」と「介護の方法」、14年での「長男扶養規範」であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
日本有数の高級茶の生産地である静岡県藤枝市岡部町朝比奈地域における農村家族の世帯変動を描き出すために、1982年、1993年、2005年、2014年に実施した調査データを用いて、4時点の対応関係のある時系列データを抽出する作業を行った。その結果、239世帯の4時点時系列データを予定よりも早く2018年度内に完成することができた。このため、2019年度にはすべての分析の柱となる結婚コーホートと世代更新の分類カテゴリーを決定し、世帯形成の推移、次世代更新率、世帯形成の経路、世代更新に寄与した因子について、カイ二乗検定、二元配置分散分析、順序ロジスティック回帰分析を用いて分析、考察することができた。このように研究が進展したため、2019年度は、5月には日本家政学会第71回大会(四国大学)での口頭発表、8月には韓国の研究者との合同研究会・合同調査(韓国忠清南道洪城郡)、10月には台湾で開催されたThe 11th IGAA Asia/Oceania Congress(アジア・オセアニア老年学会)での研究発表を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、2019年度から行っている統計解析をさらに進め、「MC-1」、「MC-2」、「MC-3」の3つの結婚コーホート別の時系列変化の全体像を明らかにする。そのうえで、農村直系制家族の連続性と継承性を打ち砕いた「更新未確定世帯」の急増、農村家族における標準的な世代更新の道筋を変化させている「帰家」・「離家」の出現について分析を進める。また、新型コロナウィルス感染症が終息した場合には、韓国における韓国研究者との合同研究会・合同調査、イタリアのリミニで開催されるSWESD2020(JOINT WORLD CONFERENCE ON SOCIAL WORK EDUCATION AND SOCIAL DEVELOPMENT)での研究発表およびボローニャ近郊の伝統的農業地域における直系家族経営の農業生産・工場の視察を行う。 また、最終年度の2021年度には、中山間地域における1982年からの40年間に日本の農村家族の根幹ともいえる世代更新・世帯継承がどのように変化したのか、その劇的な変化はなぜ起きたかについて、学会誌への論文投稿、The 22th IGAA World Congress(国際老年学会、ブエノスアイレス)での研究発表、韓国・UEの学術研究会および国内の学会での研究報告、最終報告書の執筆を行う。
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Causes of Carryover |
2020年6月28日~7月1日、イタリア・エミリア・ロマーニャ州リミニのPALACONGRESSI DI RIMINIにおいて開催予定であったSWESD2020(World Conference on Social Work Education and Social Development)において、“Decrease of stem family and the Promotion of Community-Based Integrated Care System in a Rural Area of Japan”というテーマで研究成果の報告を予定し、当該学会より2020年2月5日に報告要旨が受理された。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大により学会が延期されることが決定したため、飛行機をキャンセルした。この結果、4月22日に航空運賃が払い戻しとなり、次年度使用額が生じた。 次年度使用額は、新型コロナウイルス感染症が終息したのち、秋以降に開催が延期されるSWESD2020などの国際学会や国内学会での研究成果報告のための旅費に充てる予定である。
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Research Products
(3 results)