2017 Fiscal Year Research-status Report
現代生活学研究 ~生活者がつなぐ食(消費)と農(生産)~
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17K00771
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Research Institution | Tokyo Kasei Gakuin University |
Principal Investigator |
上村 協子 東京家政学院大学, 現代生活学部, 教授 (00343525)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 生活改善運動 / 生活者 / 現代生活学 / 食文化 / 持続可能な開発 / 人間の安全保障 / エンパワーメント / 食教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度の現代生活学研究では、日本と韓国の生活改善事業に注目して、天野正子の現代生活学を基盤に食と農の近代化と生活者の学びの系譜を整理した。 日本については文献研究により(1)1920年(大正9年)に発足した生活改善運動のなかの食生活改善運動と学校・社会の食教育を江原が注目した。また(2)1948年(昭和23年)に農業改良助長法制定後の生活改善普及事業の中核を担った農山漁家生活改善研究会や社団法人農山漁村女性・生活活動支援協会が日本各地域の女性農業者をエンパワーメントしたプロセスを整理した。さらに(3)女性が活躍する農業経営体に選定された事例から近年の農業に生活改善が及ぼした影響を考察した。 韓国については、朴卿希が応用栄養事業(1968-1986)を通してみた韓国の農村における食生活改善事業の実態を、韓国の忠清北道及び全羅北道地域における応用栄養事業を事例とし、官主導の栄養改善施策が実施対象の自治体でどのように展開され、現地の人々に受け入れられたかについて明らかした。両地域ともタンパク質やビタミン補給が必要とされ、大豆・緑黄色野菜類の増産・摂取が推奨され豆乳の作り方等調理法の教育も行われた。しかし、大豆は豆乳より味噌玉にして食する傾向が強く、嗜好に合わないニンジンはキムチに入れて摂取し、食べ慣れない空芯菜等の野菜は受け入れられなかった。改善という名の下で行われた普及事業であっても、現地においては地域の食習慣を反映しつつ選択的に受け入れられていった様子がうかがえた。 全体として、食と農に注目し【合理的】【論理的】【目に見える形で説明できる】「学校教育」ではなく、経験や体験から学ぶ生活者やジェンダー視点の現代生活学の概念と、国連の持続可能な開発や人間の安全保障の概念の関係を捉えなおしていく方向を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
韓国と日本の食文化比較については専門家である朴卿希の協力を得て、客観的なデータを整理・分析するだけでは読み取れない生活改善運動が地域や家庭生活の変容に及ぼした影響に関する調査を当初予定よりすすめて行うことができた。 他方、家計管理や生活設計に注目して、女性農業者の金融リテラシー向上がもたらす成果と課題を明らかにすること、ならびに、松平友子・伊藤秋子・御船美智子の3人の女性刑事学者の家庭経済学・家事経済学と生活改善運動などを重ねて現代生活学を検討する点は、スキルをもつ専門家によるサポートが必要な部分が多く、次年度への課題となった。
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Strategy for Future Research Activity |
生活改善に焦点をあてた平成29年度の成果から、現代生活学の特徴が、食と農「消費と生産をつなぐ」生活者の視点から、生活改善やグローバル経済の進展によってアジアの女性農業者の日常の生活設計・人間開発が変容してきた流れが示されてきた。
現代生活学研究では近代的な【合理的】【論理的】【目に見える形で説明できる】学びではない生活者の学としての現代生活学について、天野正子の現代生活学定義に依拠しながら、引き続き、韓国と日本の生活改善運動を検証を継続する予定である。
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Causes of Carryover |
専門家ならびに学生アルバイトによる資料整理を平成29年度に予定していたが、現代生活学に関する知識をもちなおかつテータの処理のできる専門家・アルバイトを雇用することができなかった。そこで人件費・謝金の項目の差額が大きく発生した。 平成30年度は、専門的な知識を有する人物に依頼をすることが可能になった。昨年度じっしできなかった分を合わせて、データ処理をすすめて金融経済教育をどのような金融経済教育を進めることが有効なのかを明らかにしたい。
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