2017 Fiscal Year Research-status Report
フランスの保育者養成制度の改革に関する研究:子どもにとっての保育を支える仕組み
Project/Area Number |
17K00774
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Research Institution | Konan Women's University |
Principal Investigator |
木下 裕美子 甲南女子大学, 文学部, 講師 (70434644)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | フランス / ソーシャルワーク高等専門教育機関 / 保育 / 大学との連携 / 国際交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ヨーロッパにおいて展開される「子どもの権利」としてパラダイムシフトするフランスの保育システムの可能性について3つの点から明らかにすることである。初年度は次年度以降に実施する調査に継続性を担保するための基盤作りを行った。まず、(1)「親支援としての保育」と「子どもにとっての保育」が交差する場となるアクションリサーチにこれまで参加した結果を参加者に共有、還元し、今後の協力体制の構築にむけた調査協力者(養成学校教員、保育職員、親の会メンバーおよび子育て・保育担当議員)との関係形成を行うことができた。(2)ヨーロッパ圏内における保育の共通枠組みと保育資格取得制度に関する動向を踏まえたフランス国内における保育教諭養成課程の仕組み・改革案をめぐる現況を検討するため、2018年2月から3月にかけマラコフ、リヨン、リールにあるソーシャルワーカーもしくは保育士専門養成高等教育機関を訪問し、学校長への制度改革に関連したプログラム、実習に関する聞き取りを行い、LMD学位制度を考慮した各教育施設の対応に関する調査を開始した。(3)「子どもにとっての保育」を実現しようとするフランスおよびヨーロッパレベル、国際レベルの実践を明らかにするため、フランスの保育士養成校を訪問するベルギーやアルゼンチンの教育機関関係者との会合に参加し、国際交流を通じてフランスが認識する課題と目指す取り組みについて情報収集を行った。また、フランスの保育職養成学校教員が中心となり推進してきた期限付きGrandir en Europeという学生・教員の国際交流事業について創設者から情報を提供を受けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2月・3月に集中的に調査を実施することとなるので、収集した情報の文字お越し・整理に着手することは来年度となる。また、調査予定日に先方の都合で調査期間中にキャンセルとなり、再度調整することができなかったことも理由として挙げられる。これらの要因から、収集した資料や聞き取り内容について整理・分析することを初年度中に完成することができなかったことら理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
調査に関して実施期間を2つに分割するなどの方法を採用する。 今後の研究推進の1つ目は、平成29年度に続き、フランス国内における保育の質の向上を目指した具体的な研修内容に関する事例集やGiampino調査報告書を整理し、当事者の研修ニーズと得られた成果に関する記述を検討し、「子どもにとっての保育」をめぐる多元的な議論の動向を探ることである。 2つ目は、ヨーロッパ圏内における保育の共通枠組みと保育資格取得制度に関する動向の把握することである。ヘンリ・パスカルの「フランスにおけるソーシャルワークの歴史」(2014)を踏まえ、初年度に提供をうけた情報を整理し、現在検討されているフランス国内における高等教育機関との連動、ヨーロッパ圏内における保育に関する資格取得制度についてのまとめを行う。フランスの政策的動向とあわせ、フランスの保育教諭養成のLMD導入に関連し、ヨーロッパ共通の保育者の専門職化のあり方について焦点化される課題を整理する。また、国際研修・実習制度についてまとめる作業に関連し、初年度にESSSE国際交流開発研究責任者Claire Bleton Martinと日本での実習生受入れ可能性を探り、その日常生活への統合と専門性の連関について共同研究を開始する予定である。 3つ目は、2017年に事業最終年度を迎えたGrandir en Europeの取り組みと評価と課題について当事者への聞き取り調査を継続することである。国際的ネットワークの仕組みとヨーロッパレベルで模索される保育の質を高める実験的取り組みについてフランスの地域との連携による実践例を基に情報を収集する。そして、ヨーロッパレベルの「子どもにとっての保育」という概念が地域の実践レベルにどのように接続していくのかをめぐる実践を整理する。 これらの研究成果について国内学会で報告し、フランスでのアクションリサーチに継続的に参加する。
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Causes of Carryover |
調査実施時期が2,3月となり、その文字お越しの作業が次年度に繰り越しになったため、次年度はその作業のために使用する計画である。
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Research Products
(5 results)