2018 Fiscal Year Research-status Report
四川省・チベット族の集落特性と変容および集落特性を生かした集落整備に関する研究
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17K00791
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
中山 徹 奈良女子大学, 生活環境科学系, 教授 (60222171)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | チベット族 / 集落調査 / 四川省 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度はムヤチベット族の集落調査を行ったため、2018年度はカンバチベット族の集落調査を行った。調査を行ったのは2018年2月~3月で、四川省カンゼチベット族自治州の集落を対象とした。現地観察調査及びヒヤリング調査を行ったのは14集落である。当初の計画では、中山及び留学生ですべての現地調査を行う予定であったが、中国当局が外国人の山間部への訪問を規制していたため、基本的な調査は留学生が実施し、中山が現地で報告を受け、調査指導する形に変更した。ただ、調査そのものは予定通り終了し、必要なデータも収集できた。調査項目は、地形(山、川、集落の位置関係、傾斜、面積など)農牧地(住宅との位置関係、家畜の種類・頭数、耕作物など)、インフラ(道路の形状、道路と住宅の位置関係、橋梁、擁壁など)、建物の状況(住宅戸数、階数、形態、色彩など)、共同利用施設(宗教施設、教育施設、広場、立地など)の状況などである。 同時に、各集落でヒヤリング調査を行い、集落の概況(住戸数、世帯数、主な生業など)、共同利用施設・共同作業(建物の状況、宗教施設の状況、祭祀・共同作業の状況など)、集落の発展過程(集落の形成時期・過程、他集落との関係など)、集落の改変状況(新たな建築物・インフラの状況、農牧業の近代化など)、今後の集落計画などについて把握した。 今回の現地調査でカンバチベット族の集落については予定したデータを入手することができ、現在データ分析を行い、学会に投稿する論文の執筆を進めている。 また、3月に海外共同研究者の西南民族大学趙副教授と、チベット族研究について意見交換を行い、今後の調査について検討した。 さらに、3月に河北省青龍満族自治県を訪問し満州族の集落及び住宅に関する比較調査を行った。満州族を比較対象としたのは、調査に関する事前準備が整ったことを、先方に連絡がついたためである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この研究では四川省カンゼチベット族自治州で暮らすカンバチベット族、ギャロンチベット族、ムヤチベット族の集落を対象に、①民族、地域を象徴する集落特性(地形、インフラ、住宅、施設などとそれら相互の関係)を明らかにし、②それらの特性を変えている原因を近代化、政策との関係で把握し、③近代化を図りつつ集落特性を維持できる具体的な集落整備の方法を検討することである。当初の予定では、先の順番に1年ずつ調査を進める予定であったが、2017年度はムヤチベット族、2018年度はカンバチベット族の集落を対象に調査を行った。順序が入れ替わったが、予定していた集落数のデータも確保でき、来年度はギャロンチベット族の調査を行う。順序が入れ替わったものの、1年に一チベット族の調査を行う計画は予定通りであり、調査分析も順調に進んでいる。 交付申請書では他の少数民族との比較調査をするとしていた。2017年度はスケジュールの関係で比較調査はできなかったが、2018年度は河北省青龍満族自治県で満州族の比較調査を行った。現在、吉林省・朝鮮族、四川省・チャン族に関する比較調査のデータを収集しており、先方と連絡が取れたところから比較調査を行う予定である。 海外共同研究者が所属する西南民族大学とは研究交流、調査に関する意見交換が予定通り実施できた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、下記のように進める予定である。 ①チベット族の集落調査。2019年度はギャロンチベット族の集落調査を進める予定である。調査方法、項目などは今年度の内容をほぼ踏襲する。 ②比較調査。他の少数民族の集落調査を行い、チベット族集落の特徴をより明瞭にする。現地受け入れ体制との関係で、朝鮮族、チャン族を比較調査の対象として検討する。条件の整ったところから、年1回程度の頻度で実施する。 ③調査結果についてはその都度、日本建築学会、日本家政学会などに投稿する予定である。2019年度は日本建築学会大会で発表予定である。また2019年8月20日~23日に中国の浙江省杭州にて、ARAHE The 20th Biennial International Congress 2019が開催される。そこでの発表も予定している。
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Causes of Carryover |
予定では研究代表者を含めた複数名で現地調査をする予定であったが、中国当局の規制が厳しく、外国人は山間部の調査に入れなかった。そのため、直接の現地調査は、留学生(中国人)のみで行った。複数名による現地調査を予定していたが、単独による現地調査になったため、旅費に若干の差額が発生した。ただし、成都で海外共同研究者との打ち合わせ等を予定していたため、成都までは複数名で訪問した。 2019年度は現地調査、比較調査、国際会議での発表、国内学会での発表を予定しているため、一定の支出が見込まれる。
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