2017 Fiscal Year Research-status Report
障害者の修正衣服ガイドライン作成に向けた更衣と座位姿勢に適したズボンの製作と評価
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17K00794
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
雙田 珠己 熊本大学, 教育学部, 教授 (00457582)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 運動機能障害 / ズボン / 座位姿勢 / CADパターン / 着用テスト |
Outline of Annual Research Achievements |
1.座位姿勢に適したズボンパターンの作成 ズボンの股ぐりの形状は、設計上きわめて重要な意味をもつが、設計者の経験に基づきラインを決定することが多い。股ぐりの測定は非接触で行う3D計測でも難しく、特に座位姿勢の計測はまだほとんど行われていない。そこで、本年度は、男性健常者5名を対象に立位と座位姿勢の股ぐり形状を採型し、寸法の変化と形状の変化を分析した。その結果、立位姿勢では前・後ろ股ぐり寸法の比は1:1 となり、採型した股ぐりの断面はV字型を示した。座位姿勢では立位より前股ぐり寸法が34%減少し、後ろ股ぐり寸法が22%増加し、前後比は1:2となりU字型となることがわかった。ここでは、分析結果を反映させ、座位と立位のいずれの姿勢でもシルエットが保持されるパターン設計をめざした。パターンは、文化式製図法ノータックパンツパターンの腰囲を座位腰囲に変更して作図し、前股ぐり寸法を2㎝たたみ、後ろ股ぐり寸法を2.5㎝開いた。CADでのパターン設計は研究協力者の角田氏(相模女子大)が行い、縫製は倉敷スクールタイガー㈱に依頼して、被験者2名の試験着を製作した。同時に、比較対象として股上の深い市販ズボンと同じパターンで試験着を製作し、2試験着を比較して動作後の着くずれも含めたフィッティングの評価を行った。 2.上肢機能の把握と着脱動作を助ける修正方法の検討 被験者2名について、日常生活での1か月間の着用テストを行いパターンの適合性を確認した。また、着用時の座面の圧力分布、着脱動作時の重心移動、着脱にかかる時間を測定した。その結果、座位姿勢の外観評価では、腰囲と股ぐり幅を広げた本パターンの効果が確認できたが、健常者の着脱動作では2種類のパターンに違いは認められなかった。現在、着用テストに適切な被験者の選定条件と障害レベルを検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.座位姿勢に適したズボンパターンの作成 立位と座位の下半身13か所の計測は、手計測で行い測定誤差も少なく精度高く実施できた。股ぐりの寸法と形状は、採型器上で計測後3Dカメラを用いて撮影した。これによって股カーブの形状は具現化できたが、現有する解析ソフトでは各部位の寸法を数値化することはできなかった。カーブの形状分析が今後の課題である。パターン製作は、CADを用いて被験者2名について実施した。パターン設計は修正を繰り返すため、CAD部分の外注は予想以上に時間を要し費用がかさんだ。設計の質を高め、修正回数を減らすためには、フィッティングの時点から専門家が関わり、修正のポイントを反映させる必要があると考えられた。 2.上肢機能の把握と着脱動作を助ける修正方法の検討 パターンの修正は座位姿勢の着装状態と着用感を向上させたが、立位姿勢でも外観評価に問題はなく、動作による着くずれも目立たなかった。今後は障害者を対象に同様の修正方法でパターン製作を行うが、着脱性への影響を測定するためには、被験者の選定条件をさらに絞り込む必要が示唆された。被験者の選定においては、障害状態を正確に把握する必要があるため、予定よりも時間がかかり計画はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
1.修正ズボンの製作と着用テスト-座位に適したズボンパターンの修正- ズボンの製作は、被験者本人・家族・介助者・医療関係者・研究者のチームで障害に応じた修正方法を検討して行う。ただし、平成30年4月に研究代表者が所属を変更し、それに伴い研究フィールドを首都圏に移す必要が生じたため、熊本県では被験者数を減らして着用テストを行い、並行して首都圏での協力体制を整えることをめざしていく。研究を円滑に進めるために、平成30年度からCADの専門家である角田氏を研究分担者に加えることを申請しており、縫製工場とも連動して製作を進める。試験着は、一般的なズボン原型で製作したものと、座位に適したズボン原型を修正したものの2種類とし、全て同一素材で製作する。被験者は2種類の試験着を1ヶ月間着用し、必要があれば補正を加え問題がないことを確認した上で、6ヶ月間の着用テストを開始する。被験者と介助者は、日常生活での着脱性と使用感、衣服に対する発語や関心の変化、外出の回数、外出先での用便時の不具合を記録する。試験着製作の終了予定は平成30年12月、着用テストは平成31年6月終了を予定している。被験者は10名を予定しているが、症例数よりも障害のレベルを揃えることを優先させる。 2.修正効果の数値化と多角的評価および評価基準の検討 修正効果の確認は、一般的なズボン原型で製作したズボンと、座位に適した原型を修正したズボンの2種類について、着衣時(座位・立位)のシルエットの評価と、着脱動作による生理的負担の測定を行い比較する。測定は着用テスト1か月終了後の時点で随時行う。同時に、着用テストの進行に合わせて、チーム内で修正効果の評価項目の検討を開始し、平成31年1月から評価を行う。
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Causes of Carryover |
人件費・謝金の費目に次年度使用額が生じた理由として次の2点があげられる。一つは障害者の被験者選定に時間を要して予定が遅れ、パターン設計まで進まなかったため謝金が生じなかったことである。他の一つは、研究代表者の異動に伴い30年度以降研究フィールドを変更する予定があり、熊本での被験者の選定を見直す必要が生じたためである。 平成30年度は一時的に研究フィールドが2か所になることによって、医療機関への謝金や機材運搬費の増加が予想される。平成29年度分と合わせて計画的に使用していきたい。
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