2018 Fiscal Year Research-status Report
障害者の修正衣服ガイドライン作成に向けた更衣と座位姿勢に適したズボンの製作と評価
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17K00794
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
雙田 珠己 大妻女子大学, 人間生活文化研究所, 研究員 (00457582)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
角田 千枝 相模女子大学, 学芸学部, 准教授 (50712337)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 運動機能障害 / ズボン / 座位姿勢 / CADパターン / 着脱動作 / 生理的負担 / 修正衣服 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.修正ズボンの製作-座位に適したズボンパターンの修正- 平成30年4月に研究代表者が所属を変更し、それに伴い研究フィールドを首都圏に移した。研究を円滑に進めるため、平成30年度からCADの専門家を研究分担者に加え、リハビリテーション医療の研究者と作業療法士に指導を依頼した。都内のリハビリテーション病院および障害者スポーツ同好会、リハビリテーション専門学校の協力を得て被験者を募り、ズボンの製作と着用実験を実施した。 被検者は、手足にまひがあり、医学的評価において立位でズボンをはき上げる動作は自立しているが、体を屈めにくく手指や腕の動きが硬いとされる7名である(50~80代の脳卒中の人、男性6名、女性1名)。試験着は、一般的なズボン原型で製作したものと、座位姿勢に合わせて原型を修正し製作した2種類である。被験者は2種類の試験着を2週間着用し着脱動作を確認した後、4ヶ月間の着用テストを実施した。着用期間中、被験者と介助者は、日常生活での着脱性と着用感、用便時の不具合を記録した。 2.着脱動作による修正効果の数値化と多角的評価および評価基準の検討 2種類のズボンについて、着装時(座位・立位)のシルエットの評価と、着脱動作による生理的負担(所要時間、心拍数、血圧、加速度)の測定および感覚評価を行った。また、作業療法士がAMPSの視点から着脱動作を評価し、障害と更衣動作の関係を分析した。測定は着用テスト2週間終了時点で行った。修正パターンで製作したズボンは、座位姿勢でW.L.が水平に保たれ、背中の開きが改善され腹部の圧迫も少なかったことから、修正方法の有効性が確認された。立位姿勢のシルエットは、やや腰回りが大きかったが概ね良好であったため、本修正パターンは、着装評価において立位・座位姿勢に適したパターンであると判断した。着脱動作と生理的負担については現在分析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
1.修正ズボンの製作-座位に適したズボンパターンの修正- 研究フィールドを変更したため、連携する医療機関の倫理委員会の承認を得て被験者を選定するまでに4か月を必要とし、試験着製作の開始が遅れた。また、被験者が高齢であるため冬季に体調をくずす人もおり、一時的に調査を中断したケースもあった。着用テスト期間については、被験者の負担を軽減するため期間を4か月間に短縮し、同時に全体の進行を再調整したが、現時点では予定よりも遅れている。一方、被験者は現在7名に留まっており、予定の10名に達していない。また、被験者の性別は男性6名、女性1名で女性の数が少なく偏りが大きい。本研究では、被験者の選定条件は障害状態を優先し、性別は特に問題としない。しかし、今後は女性被験者を優先して選定し症例数を増やす予定である。 2.着脱動作による修正効果の数値化と多角的評価および評価基準の検討 着脱動作のテストは、被験者が高齢障害者であることを考慮し、被験者宅または被験者宅最寄りの会場で実施した。そのため、実験機材の移動や場所の手配、作業療法士との時間調整などが予想以上に困難で、計画に遅れが生じた。また、今年度に予定していた筋電図の計測は、実験環境を整える必要があるため30年度には実施できなかった。今後準備を進め31年度前半の実施を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
31年度は、「修正効果の数値化と多角的評価および評価基準の検討」を目的とし、全ての着用テスト終了後、チーム(被験者および家族・介助者、作業・理学療法士、看護師、縫製士、CAD専門家、被服学専門家)で意見交換を行い、次の3点を評価する。なお、修正効果の生理的負担の測定については、新規被験者(3名)を決定し継続して計測を行う予定である。 ①着脱動作の評価:医療専門家は、動作時の可動域、上肢の筋力負担、緊張の有無、情動の変化を評価する。また、被服学専門家は、生理学的負担の分析結果に基づき、着脱動作と修正方法の評価を行う。着用者である被験者と着脱を介助する家族・介助者は、更衣・排泄時の着脱時間、足入れとはき上げ、留め具について評価する。 ②座位・立位姿勢でのシルエットの評価:被服専門家は、クロッチラインのフィット性、腹部の落ち着き、後ろ股上の長さ、留め具について評価する。また、被験者および家族・介助者は、座位・立位姿勢のシルエットと快適性、被験者の情動の変化について評価する。 ③日常生活への適応性:医療専門家は、移乗・移動時の動作性、修正部分の皮膚疾患の確認、ADLとQOLの改善について評価する。また、被験者および家族・介助者は、歩行時のズボンの脱げやすさ、排泄時の着脱性、ADLとQOLの向上について評価する。 以上、被験者および家族・介助者、医療専門家、被服専門家が、それぞれの視点から障害に応じた修正の適切さを評価し、修正方法の妥当性とさらなる改善点について検討する。また、ここで提案された修正方法については、再度パターンを作成し効果を検証する必要もあると考える。最終的目標である衣服の修正ガイドライン作成に向け、作業療法の分野で使われているAMPS等を着脱動作評価に応用し、被服学的な評価方法との融合を試みたい。
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Causes of Carryover |
人件費・謝金の費目に次年度使用額が生じた理由として次の2点があげられる。一つは、被験者が予定数に達していないことである。現在、3名の新規被験者を募っており、決定次第予算を執行する予定である。他の一つは、連携して研究を進めている医療機関の方針により、当該機関に属する被験者、作業療法士、介護士に対する謝金の支払いが不要となったためである。平成31年度は研究フィールドを広げ新規被験者を募るため、医療機関への謝金や機材運搬費の増加が予想される。また、新しく提案された修正方法については、再度着用テストを実施し効果を検証することも考えられる。平成30年度分と合わせて計画的に使用したい。
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Research Products
(4 results)