2017 Fiscal Year Research-status Report
卵黄リポタンパク質不飽和脂肪酸2成分系エマルションの安定性に関する研究
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17K00812
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
島田 玲子 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (60331451)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上野 茂昭 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (80410223)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 液卵 / 殺菌 / 高圧処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
液卵とりわけ液卵黄はクッキーやパンを焼く際に表面に塗布され,加熱焼成後に好ましい焼成色を付与するのみならず,パリっとしたクリスピーな食感を提供するために不可欠な食素材である.本研究では液卵を取り巻く技術的,環境的な課題を解決するために,糖類または脂質を添加した液卵に非加熱高圧殺菌技術を適用するとともに,スプレードライを用い,簡便,衛生的かつ携行性を備え持つ新たな食素材の開発を目指し,卵黄リポタンパク質不飽和脂肪酸2成分系エマルションの安定性を明らかにする. 初年度では,酸化防止や加工性向上を目的として,副材料(糖類や不飽和脂肪酸等)を添加した液卵黄に,汚染原因菌を接種した汚染試料について,処理圧力200~500 MPa(液卵タンパク質が変性しない圧力領域),処理温度室温の高圧処理による殺菌挙動を明らかにすることとした.市販の鶏卵を70%エタノールに15分間浸漬することにより殻表面を洗浄した.殻表面を洗浄した鶏卵を割卵後に混合し,ステンレスメッシュを用いてろ過したものを液卵試料とした.液卵試料,菌液およびスクロースの全量に対し10~50 wt%となるようにスクロースを添加した加糖液卵を調製した.LB培地にて前培養した大腸菌(E.coli K12)を加糖液卵試料に接種し汚染液卵を調製した.汚染液卵はポリエチレンバックに真空密封し高圧処理(200~400 MPa)に供した.除圧後,マイクロプレートに汚染液卵を分注し,培養マイクロプレートリーダーを用いて得られた増殖曲線に基づいて生菌数の推算を行った.スクロース添加による大腸菌の死滅抑制効果は,20%のスクロース添加試料で最も大きくなった一方,50%のスクロース添加試料ではスクロース無添加(LB培地)と比べて死滅が促進された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書における年次計画において,平成29年度は液卵殺菌技術の開発である.無添加液卵試料および,商用利用を考慮したスクロース添加試料について,非加熱殺菌を試みた.具体的には,液卵に対し処理圧力,圧力処理時間およびスクロース濃度を変化させて殺菌効果を検討したところ,殺菌効果が低下する組み合わせが明らかとなった. すなわち,スクロース添加液卵試料の処理圧力200 MPaにおける大腸菌の死滅曲線では,LB培地(LB),スクロース無添加(Sucrose 0%),スクロース添加(Sucrose 10~50%)のいずれの試料においても,処理時間が長いほど死滅した.また50%スクロース添加試料を除いて,スクロース添加試料では,LB培地に比べ大腸菌の高圧死滅が抑制された.検討した条件の中では,スクロース添加による大腸菌の死滅抑制効果は,20%のスクロース添加で最も大きくなった一方,50%のスクロース添加試料ではスクロース無添加(LB培地)と比べて死滅が促進された.この高圧死滅挙動は,処理圧力300 MPaにおいても認められた.他方,処理圧力400 MPaでは,スクロース添加試料において, LB培地に比べ大腸菌の高圧死滅が抑制された. 以上の成果は申請書における年次計画の「液卵殺菌技術の開発」を満たすものであるため,おおむね順調に進展していると評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
高圧殺菌済液卵に糖類などの酸化防止安定剤を混合包接し,液滴を噴霧可能なスプレードライ装置を用いて「液卵の微細化」を確立する.具体的には,マイクロレベルの極微細液滴を噴霧可能なバルブを設置したスプレードライヤーを用いて,殺菌済液卵を熱風中に噴霧することにより,微細液卵粉末を調製する.この熱風操作条件は,卵タンパク質が熱変性を開始する60℃未満である.極微細液卵粉末の安定性を保持し酸化を防ぐために,液卵粉末周囲に糖類および油脂(植物油)を混合したエマルションを調製する.続いて微粉砕化した極微細液卵粉末を不活性ガスである窒素等の気相に分散させ,さらに微粉砕同士が吸着しない,液卵のエアロゾル化技術を開発する.
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Causes of Carryover |
物品費のPROMINENCE HPLCシステム購入に際し,申請時に比べ送料が低くおさえられた.そのため,次年度使用額が生じた.H30年度においては,次年度使用額は試料(卵)購入に使用する予定である.
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