2017 Fiscal Year Research-status Report
高温障害米の有効活用をめざした米粉パンの新規製造法の検討と加工処理澱粉の特性評価
Project/Area Number |
17K00814
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
筒井 和美 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (50435278)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 米 / 澱粉 / パン / 高温障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
科学研究費基盤研究(C)(26350092)の継続課題として、地球温暖化により増量している高温障害米の有効活用を目的に、米粉パンの新規製造法の検討と米澱粉の加工処理を行った。 1.米粉パンの新規製造法の検討:食料自給率の向上や食物アレルギー対応食品(小麦・乳・卵)の開発の点から米粉パンの需要は多いが、グルテンが存在しないため膨化改良が必須である。本研究では平成27年愛知県産米粉(あいちのかおり)、機能性食品を用いてパンを業務用ミキサー(キッチンエイド社製KSM7)で調製した。申請の恒温恒湿器(東京理化器械製KCL-2000W、38℃ 85%RH)で発酵させた生地を焼成すると、米粉パンの比容積は機能性食品の添加により増加し、米粉粒度の影響を受けた。現在、米粉の特性について示差走査熱量計(旧SII製DSC6100)で検討しており、グルテンフリー米粉パンの製法の確立に向けて多面的な視点から機器分析している。 2.米澱粉の加工処理の検討:澱粉は様々な食品や用途に活用されているが、加水と加熱の条件を変化させることで簡便にその特性を制御できる。平成22年新潟県産コシヒカリの米澱粉を用い、湿熱処理として申請の恒温恒湿器と既存のオートクレーブ(トミー精工製LSX-300)で水分含有率10~20wt%、120℃で1~5時間加熱した。温水処理は銀セル(70μL容量)に試料濃度20wt%を50mg入れ、25、48、54℃で各12時間加熱した。現有の示差走査熱量計で20wt%澱粉分散液を昇温させると(25~120℃、1℃/分)、両加工澱粉の糊化温度は未処理に比べ高くなった。湿熱澱粉を現有の簡易偏光顕微鏡(オリンパス製CX41LF、DP26-CU、DP2-PC-S)で観察すると、一部の粒径が大きく、結晶性は消失していた。加工処理は澱粉の一部糊化を引き起こしたと推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
恒温恒湿器の導入や添加物の効果により米粉パンの比容積は増加したため、製パンの検討は十分に行えた。また、米澱粉の加工処理についても概ね、その効果を明らかにしたが、今後は加湿の条件を変えて詳細に調べる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の新規製造法に基づき米粉パンを調製し、その調理特性を評価するとともに、加工処理後の高温障害米の糊化特性を調べる。 1.米粉パンの新規製造法の確立:平成29年度に検討した新規製造法に基づいて機能性食品添加の米粉ドウを、申請の恒温恒湿器(東京理化器械製KCL-2000W)で発酵する(38℃85%RH)。焼成後、米粉パンの比容積(菜種置換法)や色差(コニカミノルタ製色彩色差計CR-5)、米粉の熱特性(現有の旧SII製示差走査熱量計DSC6100、更新予定の日立ハイテクサイエンス製DSC炉体部)や膨潤度を調べ、新規製造法による製パンのメカニズムについて澱粉構造の視点から明らかにする。また、パン断面(クラム)の気泡を評価するため、高解像度スキャナーによる画像解析以外の方法で検討する。なお、パンは申請の冷凍庫(日本フリーザー製GS-3120HC)で保管しておく。 2.加工処理後の高温障害米の糊化特性:既存のオートクレーブ(トミー精工製LSX-300)を用いて高温障害米に湿熱処理を施す。その後、現有の示差走査熱量計(SII製DSC6100)と申請の更新予定の炉体部(日立ハイテクサイエンス製)を用い、糊化温度や糊化エネルギーを調べる。また、偏光顕微鏡観察(現有のオリンパス製CX41LF、DP26-CU、DP2-PC-S)や膨潤度の実験から、加工後の高温障害米の澱粉構造の変化(粒の膨張、偏光十字の消失)について明らかにし、高温障害米の新たな機能性を見出す。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは、米粉パンの特性評価の手法を検討するのに時間を要したためである。今後は、示差走査熱量計の炉体部(日立ハイテクス製)の更新や試料容器(銀セル)、パンの原料などに使用させていただく予定である。
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Research Products
(1 results)