2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K00815
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
久保 加織 滋賀大学, 教育学部, 教授 (10190836)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 太郎 滋賀大学, 教育学部, 准教授 (90725053)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 伝統野菜 / 栄養価 / 機能性 / 嗜好性 / 食育 / 在来野菜 / 食文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、日本の伝統的な食事を支えてきた伝統野菜に着目し、その評価と伝承に向けた実践研究を行う。 今年度は、滋賀県伊吹の伊吹大根、高月の高月丸なす、甲賀の水口かんぴょう、杉谷の杉谷なすび、杉谷とうがらし、杉谷うり、下田の下田なす、弥平とうがらしの栽培状況と暮らしとの関わりについて聞き取り調査を実施し、種子をそれぞれ長年にわたり継続して栽培している農家から供与された。杉谷なすび、下田なすを含む様々な品種のナス類と、弥平とうがらしを含む様々な品種のトウガラシ類を滋賀大学内農場で栽培し、収穫物の科学分析を実施した。分析は、クリープメータを用いた物性と、DPPHラジカル消去活性、総ポリフェノール量、ビタミン類、揮発性成分等とした。 栽培した伝統野菜は、いずれも各地域で収穫されるものと変わらない大きさ、形のものを収穫することができ、一般の農場で栽培する方法が確立できた。各種科学分析の結果、いずれの伝統野菜も相当する一般野菜と比べて成分に大きな差はなく、物性面から、加熱調理向けや漬物向けなど、加工・調理特性があることが明らかになった。また、弥平とうがらしからは、辛味性トウガラシ類に共通する揮発性成分以外に、非辛味性トウガラシ類で検出される物質も検出され、弥平とうがらしの辛味性と非辛味性の両方の香り成分を持ち合わせている特徴を明らかにした。一方、ポリフェノール含量とDPPHラジカル消去活性に相関がみられ、抗酸化性にはポリフェノールが寄与している可能性が示唆された。 さらに、学校教育における伝統野菜の活用と継承について検討することを目的に、小学校生活科において伝統野菜を含めた様々な品種のナスを栽培・観察する授業を展開した。授業により、子どもの気付きの質と学習意欲、ナスに対する嗜好性を向上させることができ、このような授業実践は、今後の伝統野菜の継承にも効果的であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、日本の伝統的な食事を支えてきた伝統野菜の栽培と暮らしとの関わりを調査するとともに、伝統野菜の栄養価、嗜好性、機能性について評価することにより、今後の伝承について検討することを目的にしている。今年度は、滋賀県内5地域の8種類の在来野菜を中心に研究を進めた。その結果、これらの野菜に関わる調査と種子の入手、栽培方法の確立、栄養価や嗜好性、機能性に関わる分析はおおむね実施することができた。また、小学校生活科において在来野菜を活用した授業を実践し、その効果の検証も実施した。以上のことより、本研究は、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、日本の伝統的な食事を支えてきた伝統野菜の栽培と暮らしとの関わりの調査と、伝統野菜の栄養価、嗜好性、機能性の科学分析による評価を進める一方で、学校教育における伝統野菜を活用した教育プログラムを検討して実践し、その効果を検証することで今後の伝承について検討する。今年度は、昨年度検討した在来野菜だけでなく、滋賀県内の他地域の在来野菜についても検討を開始するとともに、科学分析手法を昨年度より増やし、栄養価や嗜好性、機能性についてより詳細に検討する計画である。さらに、小学校での授業プログラムに関わる検討を発展的に進める予定である。
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Causes of Carryover |
今年度の主な研究対象とした滋賀県内5地域の在来野菜8種類について、種子の入手と入手した種子を用いた栽培が比較的順調に進んだため、当初の予定に反して謝金を必要としなかった。さらに、購入した備品のデータ処理を既存のパソコンで行うことが可能であったことで物品費が計画よりも少なくなった。 今年度は、新たに研究対象とする在来野菜を増やし、科学分析項目も増やすことで、当初の計画よりさらに詳細な検討と継承に関わる実践研究を進めることを計画している。
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