2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K00815
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
久保 加織 滋賀大学, 教育学部, 教授 (10190836)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 太郎 滋賀大学, 教育学部, 准教授 (90725053)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 伝統野菜 / 栽培 / 調理 / 栄養価 / 嗜好性 / 機能性 / 食育 / 学校教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、日本の伝統的な食事を支えてきた伝統野菜に着目し、その評価と伝承に向けた実践研究を行っている。 まず、伝統野菜の維持・普及のための栽培条件や調理条件の検討を伊吹大根、杉谷とうがらし、杉谷なすび、下田なす、高月丸なすにおいて行った。伊吹大根については、作期の拡大を目的として、被覆資材を活用した春播き栽培を検討した。そして、根部が十分に肥大し、辛み成分である4-メチルチオ-3-ブテニルイソチオシアネート含量が通常栽培(秋播き栽培)と同等の伊吹大根を収穫することが可能であることを明らかにした。一方、ナス科の伝統野菜の連作障害等による収量および品質低下を改善するために、杉谷とうがらしと杉谷なすびについて、栽培条件や接ぎ木栽培について検討し、収穫した果実の成分分析および物性評価を行っている。今年度は、生産者圃場において、前年度明らかにした伝統野菜(杉谷なすび、杉谷とうがらし)に適した台木品種を用いて、試行的に接ぎ木技術の指導および接ぎ木苗の栽培を行った。また、杉谷なすび、下田なす、高月丸なすについては、F1品種の千両なすを対象として、煮る、焼く、塩漬けの調理をしてその成分とDPPHラジカル捕捉活性を測定し、官能評価を実施して比較した。その結果、品種間に大きな差がないこと、焼き調理により、どの品種においてもDPPHラジカル捕捉活性が高くなることが明らかになった。 次に、学校教育における伝統野菜の活用と継承について検討することを目的に、昨年度、杉谷地区の小学校で実施した総合的な学習の時間における杉谷とうがらしと杉谷なすびを教材とした栽培学習プログラムを検証し、プログラムを改善した。改善したプログラムには、栽培だけでなく、様々な活動を組み入れた。このプログラムを同小学校で実践したところ、児童の地域への愛着、成就感・満足感を高めることができると評価された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、日本の伝統的な食事を支えてきた伝統野菜の栽培と暮らしとの関わりを調査するとともに、伝統野菜の栽培条件や調理条件を検討し、その栄養価、嗜好性、機能性を評価することにより、今後の継承をすすめることを目的にしている。今年度は、伝統野菜の栽培者からの意見を聴取しながら、作期の拡大や病害対策に向けた栽培方法について検討するとともに、調理方法について検討し、成果を得ることができた。ただ、収穫物や料理を評価するために実施している各種分析のための実験機器の一部(凍結乾燥機およびGCMS)が、今年度途中に故障し、修理に数か月間を要したため、未分析の評価項目がある。一方、小学校における総合的な学習の時間において、伝統野菜を活用した授業を実践し、その効果を検証した。実践したプログラムは、1年間を通したプログラムであり、実践と評価をまとめた段階である。計画では、学校における伝統野菜を活用した学習プログラムとして、児童用、教師用の冊子体を作成する予定であり、この作業が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の未分析の項目について、順次、分析を進め、伝統野菜の栄養価、嗜好性、機能性の科学分析による評価をより詳細に実施する。そして、伝統野菜の維持・継承に向けた栽培条件や調理条件の提案を科学的根拠に基づいて行う。さらに、得られた結果は冊子体に整理し、各伝統野菜の生産地周辺のJAや生産者等の協力を得て、広報活動についても検討する。一方、小学校における総合的な学習の時間で実践した学習プログラムをもとに、児童用、教師用の冊子体作成に向け、小学校・中学校教員との協議も行いながら、検討を進める。
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Causes of Carryover |
今年度途中に実験機器が故障し、その修理に数か月を要したことと、研究代表者の勤務校における業務の多忙により、実験の進捗が遅延しているため。
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Research Products
(3 results)