2018 Fiscal Year Research-status Report
Functional Properties of Resistant Starches
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17K00820
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Research Institution | Ishikawa Prefectural University |
Principal Investigator |
松本 健司 石川県立大学, 生物資源環境学部, 教授 (60288701)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | レジスタントスターチ / 加熱加工 / 動物実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の結果を踏まえ、レジスタントスターチ(RS)を添加したうどんを作成し、茹でた後に凍結乾燥させたものをマウスに与え、加工したRSの機能性を検討した。高脂肪餌にうどんをRS含量が1%となるよう添加し、マウスに13週間摂取させた。RS添加うどんはRS非添加うどんと比較して、耐糖能異常を抑制し、糞中IgA量を有意に増加させた。また、盲腸内の短鎖脂肪酸を調べたところ、RS添加うどんではプロピオン酸が有意に増加していた。続いて、パンケーキを用いて未加工、加工のRSの機能性をマウスを用いて比較検討した(未加工のRSを生RS、加工したRSを加工RSとする)。高脂肪餌によるマウス肥満モデルにおいて(それぞれ飼料中のRS含量は2%)、生RSと加工RS共通に見られた効果として、動脈硬化惹起性コレステロールであるnon-HDLコレステロールの低下と絶食時遊離脂肪酸の低下、盲腸内pHの低下、糞中IgAの上昇であった。一方、生RS群では盲腸内容物中のプロピオン酸と酪酸含量がコントロール群と比較して有意に増加していたが加工RSでは増加していなかった。また、加工RS群のみで非絶食時の遊離脂肪酸がコントロール群と生RS群より有意に低かった。遊離脂肪酸濃度は脂肪組織におけるホルモン感受性リパーゼ(HSL)の活性と関係しており、HSL活性はインスリンにより負の制御を受ける。よって、インスリンが分泌されている非絶食状態において加工RS群で遊離脂肪酸濃度が低いことは脂肪組織でのインスリン抵抗性に関係している可能性がある。ただし、インスリン抵抗性試験に関して有意差は見られなかった。 うどんとパンケーキでは盲腸内の短鎖脂肪酸に差が見られた。パンケーキはうどんと異なり作製時に卵を添加していることから、タンパク質が一定量存在時にRSを加熱加工すると、RSは腸内細菌により資化できなくなる可能性があると推察される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度(2017年度)には様々なレジスタントスターチ(RS)を用いて麺やパンケーキを作り、官能評価試験および加熱加工後のRS残存量の結果から、うどんにはアミロファイバーを、パンケーキにはアミロジェルを適したRSとして選抜した。また、一般的にドリンク類等に非加熱で利用される難消化性デキストリンなどの水溶性難消化性グルカンに関して、マウスを用いた4週間の短期試験を実施し、脂質代謝や腸管免疫系に与える影響など新たな知見を得た。2018年度はこれら前年度の結果を踏まえて、RSを添加した「うどん」および「パンケーキ」を用いて調理加工後のRSの機能性について、高脂肪餌誘導型マウス肥満モデル(13週間飼育の長期摂取試験)を用いて生活習慣病や腸管免疫に対する影響について検討した。さらにパンケーキを用いた実験では実験群に生デンプン状態のRSを添加した実験群を設け、生デンプン状態のRSと加熱加工したRSの機能性の比較を行った。これら「うどん」および「パンケーキ」の実験から、調理加工したRSの糖代謝や腸管免疫に対する新たな知見を得、生デンプン状態のRSと調理加工したRSでは機能性に違いがあることを確認した。また、水溶性難消化性グルカンの機能性比較として、試験期間を6週間に伸ばしてマウスを用いて機能性を比較し、効果が強かった1種類については、さらに試験期間を9週間に延長するとともに、分子量による分画を行ったサンプルを投与することによって機能成分の同定を現在実施している。 以上のことから、本研究は申請時の研究計画にそって、順調に進められていると考えられることから「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は加熱加工して利用されるレジスタントスターチ(RS)とドリンク類等に非加熱で利用される難消化性デキストリンなどの水溶性難消化性グルカンに関して、様々なサンプルの機能性を比較検討して各サンプルの機能特性を明らかにするものである。RSに関する研究は、申請時に計画した実験はおおむね2018年度までに終了したが、2018年度に実施した動物実験のデータの詳細については十分な確認と考察ができていないため、学会発表や論文発表に向けてデータの検討を引き続き実施する。論文のためのデータが不足していた場合は必要に応じて追加実験を実施する。また、水溶性難消化性グルカンの実験については、これまでに複数の難消化性グルカンサンプルに加え、フラクトオリゴ糖やポリデキストロースといった水溶性難消化性糖質をサンプルとして動物実験に供し、盲腸での資化性や脂質吸収抑制作用、腸管免疫への影響などを検討してきた。今年度は、本研究で新たな知見が得られた難消化性グルカンサンプルについて、腸管IgA分泌能を中心に作用メカニズムおよび機能成分について検討を行う。また、2018年にCell誌においてフラクトオリゴ糖など大腸内で資化性が高い難消化性糖質の肝臓がん誘発性が報告されたことから(Cell, 175, 679-694, 2018)、RSと水溶性難消化性グルカンの実験結果に関して、ASTやALTといった肝臓毒性の指標を中心に、毒性についても注意して実験データを考察する。
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Research Products
(3 results)