2018 Fiscal Year Research-status Report
ヨード呈色多波長走査分析による米の澱粉特性及び食味特性の新規評価方法の開発
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17K00829
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Research Institution | Nigata University of Phermacy and Applied Life Sciences |
Principal Investigator |
中村 澄子 新潟薬科大学, 応用生命科学部, 特任准教授 (30534739)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井ノ内 直良 福山大学, 生命工学部, 教授 (80193621)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ヨード呈色 / 脂肪酸度 / タンパク質含量 / プロラミン13KDa / アミロペクチン / アミロース / 米飯物性 / 糊化特性値 |
Outline of Annual Research Achievements |
ジャポニカ米を用いて、ヨード呈色多波長走査分析に糊化特性、脂肪酸組成、タンパク質組成の比率およびタンパク含量を加えることにより、米の食味評価の検討を行った。 ジャポニカ米30品種の脂肪酸組成は、オレイン酸(36.6%)、リノール酸(35.3%)、パルミチン酸(22.0%)、ステアリン酸(2.0%),αーリノレン酸(1.3%)を示し、オレイン酸は、リノール酸、αーリノレン酸、パルミチン酸と負の相関を示し、ベヘン酸、リグノセリン酸、アラキジン酸、エイコセイ酸と正の相関を示した。アミロペクチン長鎖重合度Fb3 DP≧37(%)が高い品種は、糊化開始温度が高く、Fb3DP≧37が低い品種は、リノール酸とαーリノレン酸含量が高く、糊化開始温度、consistencyが低い傾向が示された。 リノール酸、オレイン酸含量の推定式を説明変数に糊化特性値を用い重回帰分析を行った結果、R2=0.68,R2=0.75を示し、未知試料の検定でR2=0.76,R2=0.65を示し、有望な検量線の作成が可能となった。 また、米の食味と米タンパク質の関連について検討するため、アミロースやアミロペクチン、米飯物性値、糊化特性値等とプロラミンの比率との関連について、黒龍江省産の27品種、日本産12品種のジャポニカ米について比較検討した。アミロースの分子量と相関の高いλmaxの値は、物性値の全体の硬さと高い正の相関を示し、プロラミン13kDaの比率およびトータルプロラミン比率(16kDa+13kDa+10kDa)がAAC(見かけのアミロース含量)、λmax、Aλmax、Fb3、物性値の硬さと正、糊化開始温度、λmax/Aλmax と高い負の相関を示した。プロラミン13KDaの比率と物性値の硬さの推定式をAλmaxとλmaxを用い作成し未知試料の検定でR2=0.68を各々示し、有望な推定式の作成が可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
玄米には約3%の脂質が含まれ、米油の機能性として、抗酸化性(フェルラ酸、γ-オリザノール)、免疫賦活機能(フィチン酸)、コレステロール低下作用(セルロース、ヘミセルロース、ペクチン等の食物繊維)などが報告されている。脂肪酸には、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、さらに不飽和度の高い多価不飽和脂肪酸等があり、生体膜の構成成分、エネルギー源、脂質メディエーター前駆体(n-3系多価不飽和脂肪酸)(抗炎症効果)しての機能等が報告されている。本研究では、わが国の各種ジャポニカ米30品種の脂肪酸組成の比較を行うとともに、各試料米をアミロペクチンの重合度で 分類し、糊化特性値およびヨード呈色多波長分析による各種指標との関係について検討し、脂質・澱粉複合体形成における 脂質を包接する澱粉分子と各脂肪酸との関連を検討した。アミロペクチン長鎖Fb3 DP≧37(%)が高い品種は、糊化開始温度が高く、低い品種は、リノール酸,αーリノレン酸含量が高く、糊化開始温度、consistencyが低い傾向を示した。老化指標のconsistencyとαーリノレン酸含量は負の相関を示し、食味の観点からαーリノレン酸含量が高い品種は、耐老化性が高いことが推定された。リノール酸含量は最高粘度、糊化開始温度に対し負の相関を示し、デンプンの膨潤抑制とアミロース脂質複合体の関連が示唆された。以上の結果、脂質ー澱粉複合体の形成に、脂肪酸の二重結合の数と位置および澱粉のアミロースおよびアミロペクチンの重合度が関連していることが推定された。 以上の結果を、論文2報にまとめ、さらに学会発表等3回おこなった。
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Strategy for Future Research Activity |
米の食味には、様々な要因が関与し、特に良食味米育種では、アミロース含量とタンパク質含量が選抜指標とされてきた。アミロペクチンについては、重要性が示唆されていたものの高度な技術と機器分析による多大な費用・労力を必要とするため、アミロペクチンに着目した選抜は広く行われてはいない。また、施肥条件の相違によるタンパク質組成の相対量はほぼ一定であることが明らかとなっている。米の食味に影響する最大の因子は品種であるとされているが、同じ品種の中でも栽培産地により影響される。また、米の各デンプン分解酵素は局在性があり、αーグルコシダーゼは外層・内層ともに分布し、中でも胚乳中心部に多く含まれ、αーアミラーゼは胚乳外層部に多く存在することが報告されている。本年度の研究では、ジャポニカ米の各品種(超硬質米、低アミロース米、紫黒米およびブランド米)における食味に関連する内在酵素(α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、α-グルコシダーゼ)とデンプン特性(ヨード呈色多波長走査分析)、糊化特性(RVAによる分析)、および物性値(テンシプレッサーによる分析)との関連を検討し、ヨード呈色の各ファクターおよびRVAによる糊化特性値の各ファクターを説明変数に目的変数に食味の「硬さ」あるいは「バランス度」の推定式の作成を検討し、理化学特性評価による米の食味推定式の作成を行う。
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Causes of Carryover |
2018年度は、配分した研究分担者の研究室で分担金の残金が生じたために次年度使用額が発生した。次年度の使用計画として、重合度の確定した標準でんぷんの購入に充当し、各種米品種の玄米、精米を使用した場合とヨード呈色多波長走査分析によるアミロース含量、アミロペクチンSLC、アミロペクチンFb3の比率等の比較を行い、デンプンの重合度の値の推定式の精度を改良するために使用したい。
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Research Products
(5 results)