2018 Fiscal Year Research-status Report
古代エンドウ「ツタンカーメン豆」の調理により生じる着色機構の解明と抗酸化性の解析
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17K00838
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
近藤 美樹 徳島文理大学, 人間生活学部, 准教授 (80326412)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ツタンカーメンエンドウ / 調理 / 抗酸化性 |
Outline of Annual Research Achievements |
エンドウの古代品種である通称ツタンカーメンエンドウは、未熟な豆である実を食する実エンドウである。その実は一般品種と同様に緑色をしているが、加熱によって赤く着色するユニークなエンドウである。また、当該エンドウは一般品種と比較してDPPHラジカル消去活性を指標とした抗酸化性が高いがその抗酸化性成分は未同定である。本研究では、抗酸化成分の同定および調理による抗酸化性の挙動を解析し、さらに、約50%の廃棄部にあたる莢の有効活用の可能性を検討する。 上記の目的を達成するために、平成30年度は主に以下の2点について検討した。 (1)ツタンカーメンエンドウの加熱調理による抗酸化性の挙動解析 各種の調理方法(煮る、煮含める、茹でる、蒸す、電子レンジ加熱、オーブン加熱)によってエンドウを調理し、抽出液のDPPHラジカル消去活性および総フェノール量を測定した。豆の抽出物の抗酸化活性は、ポリフェノール量と高い相関を示し、主な抗酸化成分はポリフェノール類であることが示唆された。加熱によって抗酸化性は約30%低下し、茹でた場合に茹で汁への流出が20%程度認められた。そのため、ツタンカーメン豆の抗酸化性を効果的に利用するためには、煮豆やスープ料理が適すると考えられた。さらに実験動物を用いたin vivoにおける抗酸化性の評価のために用いる試料を大量調製した。 (2)ツタンカーメンエンドウの莢の抗酸化成分の同定 莢の凍結乾燥試料から酸性エタノールを用いて抗酸化成分を抽出し、DPPHラジカル消去活性を指標に抗酸化成分を追跡した。抗酸化成分およびその加水分解物のHPLC分析ならびにLC-MS/MS解析から成分を同定した。さらに、当該成分を含む莢抽出液を大量に調製し、凍結乾燥品として得た。今後、エンドウ抽出物および莢抽出物を用いて動物実験における抗酸化性の評価を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、平成30年度はin vivoにおける豆の抗酸化性の評価までを計画しており、豆由来の試料は調製済みである。当該試験において抗酸化酵素測定用のキットを使用するが、詳細なメカニズムを検討するためには項目の追加が必要となった。しかし、キットは高価であり、計画通りに進めた場合に予算が不足することが判明した。そこで、当初は豆と莢の2種類の評価を別々の年に実施し、キットも2回購入することを予定していたが、同時に測定することでキットの少量化を図り、次年度に実施予定であった莢の抗酸化性の試験と同時に測定することにした。そのため、in vivo実験は次年度に繰り越すことにしたが、一方で次年度に計画していた莢のin vitroの抗酸化性の評価および成分の同定を先行して行った。 よって、総合的に判断して、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度は、まずin vitroにおける莢の加熱処理前後の抗酸化性の比較を行う。次いで、豆および莢由来の抽出物を用いて、in vivoにおける抗酸化性の評価を実施する。
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Causes of Carryover |
平成30年度に予定していた動物実験において、エンドウの抗酸化性の評価のために使用する酵素活性測定キットは高価である上に、作用機序の詳細な解明のために測定項目を増やす必要性が生じたため、当初の予算では費用が不足することが判明した。一方、同様の試験を対象試料を変えて翌年度に実施する計画であったが、2つの試料の試験を同時に実施することで、キットの購入数を控えることができると判断した。そこで、翌年度に一括で動物実験を行うことにしたために次年度の使用額が生じた。これらは令和元年に、動物およびキット購入代として使用することになっている。
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Research Products
(5 results)