2019 Fiscal Year Research-status Report
古代エンドウ「ツタンカーメン豆」の調理により生じる着色機構の解明と抗酸化性の解析
Project/Area Number |
17K00838
|
Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
近藤 美樹 徳島文理大学, 人間生活学部, 准教授 (80326412)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | ツタンカーメンエンドウ / 加熱 / 着色 / 抗酸化性 |
Outline of Annual Research Achievements |
ツタンカーメンエンドウの実は、加熱中に緑色から赤く着色する性質を有するが、その着色機構は未解明である。さらに、莢は紫色を呈しており、抗酸化性を有することが報告されているが、生体での効果は不明である。ツタンカーメンエンドウの加熱中に生じる着色機構の解明ならびに莢の抗酸化性の評価を目的に、2019年度は次の2点について検討した。 (1)着色源Xの加熱により生じる着色成分Yの探索および同定と着色機構の解明 既に着色源Xを単離・同定しているが、加熱後に生じる着色成分Yは未同定である。そこで、単離した着色源Xを水溶液中で加熱して着色を確認後、LC/MS分析を行ったところ、長波長側に吸収を示し、溶出時間を異にする複数のピークが検出された。これらピークは、着色源Xの酸化物に相当する同一のMSシグナルを与えたことから、異性体であることが示唆された。次いで、この着色機構を詳細に解析するため、先行研究を参考に酸化モデル実験を行った。化学的に合成した着色源Xを加熱・酸化して生成された着色成分は、エンドウ由来の着色成分と同様に複数のピークを与え、MSおよびMS/MSのパターンもエンドウ由来の着色成分のものと完全に一致した。以上の結果から、ツタンカーメンエンドウの加熱によって生じる着色成分Yは、着色源Xの酸化物であり、複数の異性体から構成されることが示唆された。 (2)莢の抗酸化成分Zの安定的な調製方法の検討 抗酸化成分Zは同定済みであるが、生体抗酸化性の評価に際し、動物実験用の試料調製における成分の安定性の課題があった。そこで、抗酸化成分を効率的に抽出する溶液を検討し、2種類の酸性抽出液を候補として選択した。次いで、濃縮および溶媒除去過程で抗酸化成分Zが分解されることから、安定性の高い濃縮方法および抽出溶媒の組み合わせを検討した。今後、決定した調製方法によって試料を大量調製し、生体での評価に用いる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初、動物実験によって莢の抗酸化性を評価する予定であった。しかし、莢の抗酸化成分Zの調製に際し、予め、pH安定性や効率的な抽出方法を再検討する必要が生じ、動物実験用の試料の調製条件を再検討した。そのため、動物実験が次年度に繰り越しになった。一方、ツタンカーメン豆の加熱による着色機構の解析にあたり、着色成分Yを追跡して複数の成分を特定するとともに、モデル実験から、着色機構の一端を解明するに至った。また、これまでに明らかにしていた着色源Xに加えて、さらに2種類の着色源を同定することができた。これらの成果は、当初の計画以上の成果である。総合的して、概ね順調に進行していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
ツタンカーメン豆の加熱による着色成分Yの詳細な構造解析を行い、着色源Xおよび着色成分Yとの関係から着色機構を明確にする。その成果を国際学術雑誌において発表する。さらに、動物実験において莢の抗酸化性を評価し、一般品種に対する有意性を明らかにする。
|
Causes of Carryover |
動物実験を予定していたが、莢に含まれる抗酸化成分Zの安定性の評価や最適な調製方法を検討する必要が生じた。そのため、動物実験が繰り越しとなった。次年度に、動物実験を実施するため、動物購入および各種生化学検査の測定試薬代として使用予定である。
|
Research Products
(5 results)