2020 Fiscal Year Research-status Report
古代エンドウ「ツタンカーメン豆」の調理により生じる着色機構の解明と抗酸化性の解析
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17K00838
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
近藤 美樹 徳島文理大学, 人間生活学部, 准教授 (80326412)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ツタンカーメンエンドウ / 抗酸化性 / 着色 / 調理 / アントシアニン |
Outline of Annual Research Achievements |
ツタンカーメンエンドウの実は、加熱中に緑色から赤く着色する性質を有するが、その着色機構は未解明であった。前年度までに、着色源Xを単離し、着色源Xの酸化によって着色成分Yが生成されることを示したが、着色源Xの詳細な構造解析には至っていない。また、当該エンドウは普通品種のエンドウよりも高い抗酸化性を示す。これまでに主要な抗酸化成分を同定しているが、他の複数の成分の存在が示唆されている。さらに、紫色を呈する莢に抗酸化成分が存在することを確認しているが、その構造および生体での効果は不明である。そこで、2020年度は、ツタンカーメンエンドウの実の加熱による着色反応における着色源Xの詳細な構造解析、ならびに実および莢に含まれる複数の抗酸化成分の構造解析を実施した。 (1)着色反応における着色源Xの構造解析:着色源Xにはエピマー構造が存在する。詳細な構造を解析するために、フラバン間の開裂反応により生じた化合物をタンデム型質量分析計を用いて解析した。それら化合物の情報に基づいて着色源Xの構造を明らかにした。 (2)実の抗酸化成分の単離・同定:実の種皮抽出液からDPPHラジカル消去活性を指標にHPLCによって5種類の抗酸化成分を単離し、質量分析の結果から成分を同定した。これらは、先に同定した主要抗酸化成分と類似の構造を有する物質であった。 (3)莢の抗酸化成分の構造解析:前年度に単離した莢に含まれる4種類の主要な抗酸化成分の質量分析を行い、デルフィニジンおよびシアニジンをアグリコンとするアントシアニンであることを明らかにした。これらは、既報の成分とは異なることを示唆する結果を得ている。今後は、ツタンカーメンエンドウの莢抽出物の生体における抗酸化性について、酸化ストレスを負荷した実験動物において評価する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、動物実験により莢の抗酸化性を評価する予定であったが、COVID-19の影響で研究に制限がかかったため実施することができなかった。一方、実の抗酸化成分について、5種類を追加同定することができた。さらに、エンドウ豆の加熱による着色反応における着色源の詳細な構造を明らかにするなど、これまでの成果をさらに補完するデータを集積することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
繰り下げとなった動物実験については、鉄投与により酸化ストレスを誘導したマウスにツタンカーメンエンドウの莢抽出物を事前に投与し、血漿の脂質酸化に対する影響を評価することによりツタンカーメンエンドウの莢に含まれる生体抗酸化性を明らかにする。これまでの成果と合わせて、国際学術雑誌において公表する。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響により、動物実験および成果の公表が遅れたため。次年度に、動物実験および論文掲載費として使用予定である。
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