2018 Fiscal Year Research-status Report
摂食時間制限による腸内環境変化と消化器系臓器の機能適応
Project/Area Number |
17K00854
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
星 奈美子 神戸大学, 医学研究科, 助教 (40645214)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 腸内環境 / 腸内細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体は環境の変化に応じて適応することで種を保存することができる。本研究は摂食状況とそれに伴う腸内環境の変化に応じて、腸管長などの消化器系臓器のサイズや機能に変化が生じるかを検討することを目的としている。 これまでに、C57/BL6Jの雄マウスで食餌制限群と非制限群を設け、糞便の16SrRNA遺伝子解析による腸内細菌の主座票分析などを行いクラスターが分離するなどの変化を観察した。小腸長が制限群で短くなるものがあったが、これらマウスは低体重で体長も小さくなる傾向があることが分かった。さらに、制限に適応し、制限4-5週での血糖値が非制限群と同様に回復する結果は再現性を得られず、一定の結果が認められなかった。詳細な観察を加えたところ、食事量に有意差がなくても、食事制限群では、マウスの活動時間が長くなっている可能性が判明し、食餌時間制限という単独の条件ではなく活動性の変化により消費エネルギーに差が出てしまい血糖値にもばらつきが目立つなど、形質が修飾される可能性が高いと考えられた。そこで、課題3で使用予定であったGPR43欠損マウスの解析を前倒し、酢酸など腸内環境に豊富な短鎖脂肪酸を認識できないマウスにおいて、臓器サイズなどに変化がないか解析した。興味深いことに、明らかな臓器サイズの変化は欠損マウスと野生株で差を認めないものの、アミノ酸トランスポーターの腸管での発現に有意な変化を認めることが判明し、大変興味深い結果と考える。これは、腸内環境で短鎖脂肪酸が欠乏する状況においては、ほかの栄養素となるアミノ酸の利用などに対し生体が適応している可能性があることを示唆すると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
動物の活動性制御は困難であったため、課題を前倒しし、食餌制限ではなく、栄養素が認識できないGPR43欠損マウスを使用することにより、腸内環境の変化(短鎖脂肪酸が減少する環境など)を模擬的に再現することで対応を試みた。結果、アミノ酸トランスポーターに明らかな変化を認めるという興味深い知見をえることができた。消化器系臓器が腸内環境の変化にて、明らかな臓器サイズなのど変化による適応ではなく、他の栄養素の利用に関わる遺伝子発現を相互的に制御するなど環境に適応している可能性を示唆しており、重要な結果と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
GPR43欠損マウスの定常状態での解析は腸管を中心に行ってきたため、肝臓や免疫システムなどなど、他臓器の解析も追加して行う。また、アミノ酸トランスポーターの発現変化が大腸では著明でなく、小腸において有意である知見も得ているため、やはり、栄養素の利用という点での重要性を示唆すると考えている。そこで、アミノ酸制限食などを導入することで、短鎖脂肪酸に加え、必要なアミノ酸の利用も制限される環境を設定することで、何かしらの適応障害(体長や体重変化を伴わない臓器サイズの変化など)が観察される可能性もあるため、特殊食による実験を検討したい
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Causes of Carryover |
情報収集のための旅費がやや抑えられた。また、代謝産物解析が高価であるため、一定のサンプル数の蓄積のうえで外注を行う予定であるため、次年度使用額が生じた。翌年度に回収されるサンプルと一括で当該助成金を使用する。
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