2017 Fiscal Year Research-status Report
食品中化学物質と細菌性毒素の複合暴露による生体影響とそのメカニズムの解明
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17K00861
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
増田 修一 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 教授 (40336657)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島村 裕子 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教 (60452025)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 化学物質 / 黄色ブドウ球菌 / ブドウ球菌毒素 / 遺伝毒性 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、化学物質および病原性細菌のヒトに対するリスク評価については、各リスク因子のエンドポイント、評価試験系の曝露期間等が異なることから同一の実験系を用いての評価は行われてこなかった。しかし、我々は、日常的に病原性細菌の影響を受けており、化学物質のリスク評価をする場合、細菌性毒素等の病原性因子の存在を考慮すべきであると考えられる。しかし、両者の同時曝露による生体影響の報告はこれまでになく、評価する実験系も構築されていない。しかし、ブドウ球菌毒素 (SEA) は遺伝毒性は示さないが、細胞増殖やサイトカインの分泌を亢進させることから、遺伝毒性を有する化学物質との同時曝露により、遺伝毒性が増強する可能性が考えられる。また、化学物質の曝露により、食中毒菌の増殖や細菌性毒素の産生に対しても変動を与えることも考えられ、両リスク因子の相互作用を考慮することはヒトに対する健康リスクを考える上で重要である。 そこで、本研究では、これまで未解明であった化学物質および病原性細菌の複合曝露によるリスク評価の検討およびその評価系の構築に向けた知見を得ることを目指し、様々な化学物質とSEAを同時に暴露することにより、その毒性や細菌の増殖、毒素産生等が変動するのか検討する。研究内容としては、(1)化学物質が黄色ブドウ球菌の増殖に与える影響を検討し、各種化学物質が黄色ブドウ球菌の増殖およびブドウ球菌毒素 (SEA) 産生能に与える影響ついて検討すること、(2)化学物質およびSEAの複合曝露による各種サイトカイン産生に及ぼす影響について、毒性影響を評価する細胞を用いた新規スクリーニング評価系を構築すること、(3)マウスに化学物質とSEAを複合曝露した際の腸内細菌叢の変動を検討することを目的とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、遺伝毒性物質、内分泌攪乱化学物質、発がんプロモーター等の各種化学物質および細菌性毒素の同時暴露による細菌の増殖及び細菌性毒素の産生に対する影響について検討している。試験対象としては6種類の化学物質 (アクリルアミド 、MeIQX、ビスフェノールA、ノニルフェノール、N-ジメチルニトロソアミン および12-O-テトラデカノイルホルボール13-アセタート) を黄色ブドウ球菌S. aureus No.29 (enterotoxin A (SEA)+; No.29株)に曝露し、細菌の生育に及ぼす影響について調べ、生育を阻害しない濃度を明らかにした。次に化学物質をNo.29株の生育を阻害しない濃度で曝露し、暴露後のNo.29株におけるSEAの産生および病原性因子の発現制御に関与するRNAIII遺伝子の発現量を調べた。その結果、アクリルアミド、ノニルフェノールおよびN-ジメチルニトロソアミンをの暴露することにより、SEAおよびRNAIII遺伝子の発現量が有意に増加することが明らかになった。現在、C57/BL6Jマウスから採取した脾臓細胞に各化学物質とSEAを同時暴露させて、毒素産生量及び遺伝子発現量についてはWestern blot及びリアルタイムRT-PCRを用いて、また誘導されるDNA損傷性の変動についてはコメットアッセイを用いて評価を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、これまで未解明であった化学物質および病原性細菌の複合曝露によるリスク評価の検討およびその評価系の構築に向けた知見を得ることを目指し、各種化学物質とSEAを同時に曝露することにより、それぞれの毒性発現にどのような影響を与えるか以下の内容について検討する。現在、各種化学物質が黄色ブドウ球菌の増殖に与える影響やブドウ球菌毒素 (SEA) 産生能に与える影響ついて検討している。平成30年度においては、各種化学物質とSEAの複合曝露による各種サイトカイン産生に及ぼす影響やDNA損傷性等の遺伝毒性の変動について検討を行う予定である。さらに、マウス等の実験動物に各化学物質を連続的に自由摂取させた後にSEAを投与し、各器官における毒性発現や腸内細菌叢における影響等についても検討する予定である。これらの実験を実施することで、これまでに報告されていない化学物質と病原性細菌との複合暴露によるリスク評価を実施することができ、国内外的にも新規の知見を報告できると確信している。
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Causes of Carryover |
当該年度の直接経費における消耗品(一般試薬)の購入が若干少なかったことから、次年度に繰り越すことになった。
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Research Products
(1 results)