2017 Fiscal Year Research-status Report
骨・血管連関新規リン調節分子による異所性石灰化機序解明とCKD栄養療法への展開
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17K00868
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
伊藤 美紀子 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (50314852)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 更沙 兵庫県立大学, 環境人間学部, 助教 (90733387)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 血管石灰化 / 高リン血症 |
Outline of Annual Research Achievements |
進行した慢性腎臓病(CKD)患者やCKD のために透析導入となった患者では血管の異所性石灰化が進行し、生命予後を悪化させている。この血管異所性石灰化には高リン血症が大きくかかわることから、食事からのリン摂取の制限が重要となっている。このような状況から臨床栄養においては新たなリンプログラムの構築が必要となっており、臨床栄養学に適応できる分子栄養学的な理論の確立が望まれている。そこで本研究では、CKD患者における異所性石灰化進展の抑制を目指す栄養療法を開発するために、骨・血管臓器連関からリン代謝調節を明らかにすることを目的とする。特に申請者が研究を進めている新規リン調節因子について細胞を用いた検討ならびに、動物モデルを用いた検討を行った。 細胞を用いた検討では、正常ヒト大動脈血管平滑筋細胞を用いて異所性石灰化との関連を検討した。正常ヒト大動脈血管平滑筋細胞は、リンとカルシウムを添加し2週間程度で石灰化誘導が可能なモデル細胞である。リン調節分子は誘導後3日目から上昇を初め、石灰化完了まで高値を示した。また、生体における検討として、CKDモデルラットを用いた研究を行った。まずアデニンを過剰投与して慢性腎不全モデルラットを作製した。胸部大動脈を取り出し、血管石灰化をVon Kossa染色を行って評価し、連続切片を用いて候補分子の免疫染色を行った結果、石灰化部位に特異的に発現している事を明らかにした。以上より、本分子は血管石灰化に関わる因子である可能性が高いことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞ならびに動物モデルでの検討を進めており、一定の成果を得ている。次年度につながる成果となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞モデルを用いた検討では、さらにメカニズムを明らかにするためにノックダウンを試み、石灰化への影響を検討する。ただし、トランスフェクション効率がかなり悪い細胞系であるため、エレクトロポレーションを用いた条件など十分に検討した上で行う。 CKDモデル動物では、腎不全発症後に与える飼料として食餌性リン量を変えた特殊飼料に用いることで、食餌性リンの血管石灰化への影響と調節分子との関連を明らかにする。骨ミネラル量やFGF-23などリン代謝関連因子の測定も行うとともに、食餌性リン摂取量との関係も含めて解析する。経時的な石灰化の変化による遺伝子発現量の変動、たんぱく質量の変化、高リン負荷(持続的、間欠的)による発現量への影響なども解析する。これにより、本分子が異所性石灰化の初期に働き石灰化を誘引する分子か、石灰化進行を促進する因子かを明らかにする。
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Causes of Carryover |
実験の進行上、当該残予算で購入可能となる必要な物品がなかったため。 新年度以降、リアルタイムPCR用試薬購入(約4.5万円)に充足する予定である。
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