2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K00877
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Research Institution | Seitoku University |
Principal Investigator |
横井 克彦 聖徳大学, 人間栄養学部, 教授 (10200883)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
許斐 亜紀 安田女子大学, 家政学部, 講師 (40529658)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 老化 / 脳 / 鉄 / マンガン / 行動異常 |
Outline of Annual Research Achievements |
わが国は、鉄摂取の不足が進行している一方で、マンガン摂取の過剰傾向が続いている。特に女性は男性に比べて鉄の必要量が高いにも関わらず、鉄摂取量は男性より少なく、鉄欠乏の有病率が高い。この状況において女性の脳の変性疾患が著明に増加している。そこで、食事性鉄欠乏-マンガン過剰が脳の代謝や機能にどのような影響を及ぼすか、ラットを用いた基礎実験により検討している。 鉄無添加ならびに米国National Research Councilの定める鉄必要量レベルの計2段階とマンガン必要量の1, 3, 6, 9倍レベルの計4段階に設定した2要因条件で飼育したラットの脳各部位中マンガン濃度を測定した。2元配置分散分析の結果では、重度鉄欠乏ですべての脳の部位におけるマンガン濃度が有意に上昇した。また、分散分析の結果、大脳皮質、線条体、小脳中マンガン濃度に対するマンガンレベルの主効果が有意であった。順位相関分析では、海馬、間脳、小脳においては、重度鉄欠乏時のみに飼料中マンガンレベルと各部位中マンガン濃度の間に有意な正の相関関係があった。大脳皮質および線条体では、重度鉄欠乏時も充足時も、飼料中マンガンレベルと脳部位中マンガン濃度の間に正の相関関係があったが、大脳皮質では重度鉄欠乏時に相関係数が増加した。以上の結果から、部位によっては飼料中マンガンレベル依存性のマンガン濃度の上昇が、重度鉄欠乏によって増強されることが明らかとなった。また、従来検討されて来なかった重度鉄欠乏時にペアードフィーディングを行なった結果、重度鉄欠乏時にみられる血液・肝臓中脂質異常は概ね鉄欠乏自体に起因するが、肝臓中リン脂質濃度には鉄欠乏よりも飼料摂取量の低下の影響が見られることが明らかとなった。今後、鉄欠乏に伴うマンガン貯留のメカニズムやマンガン貯留が行動に及ぼす影響について検討していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
重度鉄欠乏-マンガン負荷時における脳各部位のマンガン濃度の分析、並びに、行動異常の解析がほぼ終了し、研究計画はおおむね順調に進展している。この結果、重度鉄欠乏によってすべての脳部位においてマンガン濃度が上昇し、脳の部位によっては用量依存性のマンガン濃度の上昇が重度鉄欠乏によって増強されることが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
重度鉄欠乏-マンガン負荷時のすべての脳部位におけるマンガン分析ならびに行動解析を実施したので、今後、当初の計画に従って、実施可能な脳の部位については、どの画分でマンガン濃度が上昇したのか測定し、さらに、鉄欠乏ラットの脳試料を用いて脳のマンガン取り込みならびに老化にかかわる遺伝子発現に対する鉄欠乏の影響について解析したい。研究成果は国内外の学会または国際誌において発表する予定である。
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Causes of Carryover |
(理由)当該年度は脳の各部位におけるマンガンならびに他の微量元素の分析を主に実施したので、脳のマンガン取り込みにかかわる遺伝子発現の分析は次年度に実施する必要がある。当該年度については、研究分担者が、経費を使用しないで実施できる測定結果の解析ならびに考察を分担したために、次年度使用額が生じた。 (使用計画) 脳のマンガン取り込みにかかわる遺伝子発現の分析等に必要な物品費やその他経費に使用したい。
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Research Products
(3 results)