Elucidation of the pathogenesis of renal angiopathy due to prostacyclin deficiency and approaches to improvement and prevention

2021 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 17K00890
• Research Institution: Kanagawa Institute of Technology
• Principal Investigator: 横山 知永子 神奈川工科大学, 健康医療科学部, 教授 (90200914)
• Project Period (FY): 2017-04-01 – 2022-03-31
• Keywords: プロスタサイクリン / PGI2 / 腎障害

Outline of Annual Research Achievements

プロスタサイクリン(プロスタグランジン(PG)I2)はn-6系必須多価不飽和脂肪酸のアラキドン酸からシクロオキシゲナーゼ経路によって産生され、心血管系の恒常性維持に重要な働きを担う生理活性脂質である。PGI2合成酵素遺伝子破壊マウスはPGI2を産生できず、加齢に伴い慢性腎臓病様の腎障害を発症するが、その発症機構は明らかではない。本研究は、PGI2欠乏が惹起する腎血管障害について、障害の発症機序に関わる情報伝達経路、腎および血管保護作用におけるPGI2とアディポネクチンとの関連性、n-3系多価不飽和脂肪酸による病態改善・予防効果を明らかにするためにPGI2欠損マウスならびに培養細胞を用いて解析することを目的とした。
腎血管障害発症に関するPGI2シグナル伝達経路に関して、IP受容体あるいはPPAR-deltaのアゴニストを投与した幼若マウスを用いて検討した結果、PGI2合成酵素遺伝子欠損マウス（PGIS-/-）にPPAR-delta選択的アゴニストを投与した群において腎臓での炎症惹起因子の発現レベルに有意な低下を見出した。高齢のヘテロ接合体マウスの腎に異常は認められないが、腎組織における炎症性サイトカインmRNAの発現レベルは野生型と比較して有意に上昇していたことから、生体内のPGI2レベルの低下は腎臓における炎症惹起の一因と考えられる(H29-R1)。
アディポネクチンは脂肪細胞で産生される抗炎症性アディポカインである。この因子の産生低下は炎症惹起に関与する他のアディポカインの産生を亢進する。そこで、アディポカインの産生に対する多価不飽和脂肪酸の影響を検討した結果、3T3-L1由来肥大化脂肪細胞においてn-6系脂肪酸は炎症性因子の発現を促進するが、n-3系脂肪酸はこれらの発現レベルに影響しないこと、炎症刺激を与えた脂肪細胞においても同様であることを見出した(H29-R3)。