2018 Fiscal Year Research-status Report
分岐鎖アミノ酸と成長ホルモンによる筋委縮抑制作用の分子機構の解明
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17K00899
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Research Institution | Kobe Women's University |
Principal Investigator |
置村 康彦 神戸女子大学, 家政学部, 教授 (30204100)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | IGF-I / 成長ホルモン / 筋 / 分岐鎖アミノ酸 / LAT1 |
Outline of Annual Research Achievements |
成長ホルモンを欠くspontaneous dwarf rat(SDR)では、筋委縮抑制に重要な役割を果たすmTORC1の分岐鎖アミノ酸(BCAA)による活性化が明確ではないこと、しかし、GHを補償することにより、BCAAによるmTORC1活性化がみられるようになることを報告した。この機序を明らかにする目的で、次の検討を行った。 雄性6週齢のSDRに、浸透圧ポンプで2週間GH(10 μg/h)、あるいは生理的食塩水 を持続皮下投与した。持続投与開始後15 日目にそれぞれのラットから骨格筋を摘出、mRNAを抽出し、次世代シークエンサーで各サンプル約1400万のmRNAの部分配列を決定し、各mRNA量を比較検討した。比較的発現頻度が高いものもの(RPKM (mRNA100万解読あたり検出されたmRNA数を遺伝子配列長で補正した数値) 2以上)で、GH処置により倍以上となったものを抽出した。 BCAAを含む中性アミノ酸の輸送体であるLAT1 mRNAはGHにより増加していた。このLAT1の増加がBCAAの作用発現に関わる可能性を考えた。L6及びC2C12筋管細胞で確認したところ、GHはLAT1 mRNAを増加させず、IGF-IがLAT1 mRNAを増加させたことから、SDRでもGHにより分泌が亢進したIGF-IによってLAT1 mRNAが増加した可能性が示唆された。 実際に、IGF-IはC2C12細胞増殖を促進し、細胞サイズも増大させ、細胞内mTORC1も活性化した。LAT1の阻害薬であるBCHは、IGF-Iにより生じる細胞増殖、細胞サイズの増大、mTORC1活性亢進を抑制したが、LAT1 mRNAをRNA干渉法で減少させた時には、IGF-IによるmTORC1活性化の抑制は確認できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
GHにより変動したmRNAは多数あり、それらの筋における作用を一つずつ解析することは容易ではない。時間も人員も必要とする。特に本年は大学院生の卒業や予期せぬ病気休学のため、迅速に研究を進めることができなかった。対応策として、解析技術を持つ実験補助者を任用したが、それでも予定より進行に遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で抽出されたmRNAのうち、既知のタンパク質については、今回報告したように、まずmTORC1との関連に関して、さらに細胞サイズや増殖に及ぼす効果について、培養細胞系で検討を進めていく。阻害薬やRNA干渉を用いて、そのmRNAがコードするタンパク質の生理的意義について明確にしていく。 機能が未知のタンパク質も抽出されているが、それらに関しても、筋細胞培養系でそのRNAをRNA干渉法で減少させた場合、細胞増殖能及びサイズが変化するか、BCAAによるmTORC1活性化が変動するか検討していく予定であるが、機能が想定されるタンパク質に比べて、解析に時間を要すると考えられる。 本年度は、実験に携わる大学院生の減少に伴い、研究活動に遅延が生じた。今後も実験補助者の任用等で可及的速やかに研究を推進していきたい。
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Causes of Carryover |
今年度は、大学院生の予期せぬ病気休学等により人手が不足し、研究に遅れが生じた。そのため、化学薬品、培養用品等の購入が減少し、残額が生じた。次年度は、主にこれらの消耗品の支出に使用する予定である。
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