2018 Fiscal Year Research-status Report
ミトコンドリア異常と代償的葉酸代謝亢進の分子基盤と予防栄養の探索
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17K00905
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Research Institution | Seinan Jo Gakuin University |
Principal Investigator |
天本 理恵 西南女学院大学, 保健福祉学部, 准教授 (00352344)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内海 健 九州大学, 医学研究院, 准教授 (80253798)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 葉酸代謝 / ミトコンドリア機能異常 / 心臓組織 / p32タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ミトコンドリア機能異常を持つマウスの心臓における葉酸代謝に着目して、『ミトコンドリア機能低下が原因となる病態悪化(心機能低下)に対し、葉酸およびアミノ酸代謝の亢進が代償的な防御機構として働く。』との仮説を提唱し検証している。 平成29年度は、心疾患と葉酸代謝との関連をミトコンドリアレベルで解析するために、モデルマウスと培養細胞の2つの系を用いて実験を行った。結果、培養細胞の実験系では、WTとp32KO細胞との間に実験系で使用する酵素群等の発現差が殆ど見られなかったため、平成30年度は酵素群に発現差が見られたミトコンドリア機能異常(p32cKO)マウスと正常マウス(WT)の心臓組織を使用した実験に重きをおいた。 ミトコンドリア機能異常を示す心筋特異的(p32cKO)マウスと正常(WT)マウスの各心臓組織を使用して実験を行った。各心臓組織において、葉酸代謝を介するOne-carbon metabolismに関係する酵素群のうち、平成29年度にMthfd2およびPhgdhの発現を免疫染色等にて確認したが、さらに細胞質の葉酸代謝酵素(Mthfd1等)と、ミトコンドリアの葉酸代謝酵素(Mthfd2L等)の発現ついても免疫染色およびWestern blotにて確認した。結果、免疫染色ではp32cKOマウスにおいて、ミトコンドリアの葉酸代謝酵素の強い発現が見られたが、WTマウスではこれらの酵素の発現は見られなかった。またタンパク質レベルにおいては、WTおよびp32cKOマウスの両心臓組織において、細胞質およびミトコンドリアの葉酸代謝酵素の発現が確認されたが、ミトコンドリアの葉酸代謝酵素によっては、KOでの発現増強がみられるものもあり、一方でWTに発現が見られない酵素もあった。また遺伝子レベルでは、p32cKOの心筋においてphgdh、mthfd2のmRNAの増加が見られた。今後は、これらの酵素の若齢個体と成熟個体の発現比較や糖質、脂質代謝にかかわる酵素群の発現等を検討していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、心機能と葉酸代謝との関連をミトコンドリアレベルで解析するために、モデルマウスと培養細胞の2つの系を用いて実験を行った。心臓組織を使用した実験では、ミトコンドリア機能異常を示す心筋特異的p32cKOマウスと正常(WT)マウスの各心筋において葉酸代謝を介するOne-carbon metabolism(1C)に関係する酵素群のうち、Mthfd2およびPhgdhの発現を免疫染色およびWestern blotにて確認し、p32KOの心臓におけるMthfd2の強発現が確認できた。一方で培養細胞による実験では、WT、p32KOのいずれのMEF細胞においても、心臓組織で見られたような発現差は認められなかった。よって平成30年度は、酵素群に発現差が見られたp32cKOとWTマウスの心臓組織を使用した下記実験に重きをおいた。 ミトコンドリア機能異常を示すp32cKOとWTマウスの各心臓組織を使用して実験を行った。各心臓組織において、1C metabolismに関係する酵素群のうち、平成29年度にMthfd2およびPhgdhの発現を免染、Western blotにて確認したが、さらに細胞質の葉酸代謝酵素(Mthfd1,Shmt1)と、ミトコンドリアの葉酸代謝酵素(Mthfd2L, Mthfd1L, Shmt2)の発現ついても免疫染色、Western blotにて確認した。結果、免染では、p32cKOにおいてMthfd2L、Shmt2の強い発現が見られたが、WTでの発現は見られなかった。またタンパク質レベルでは、WTおよびp32cKOマウスの両組織において、Mthfd1、Shmt1、Mthfd1L、Shmt2の発現が確認されたが、うちMthfd1LとShmt2の発現はWTに比較しKOで発現増加がみられた。WTの心臓でのMthfd2Lの発現は見られなかった。また遺伝子発現レベルでは、p32cKOの心筋においてphgdh、mthfd2のmRNAの増加が見られた。マウスの心臓組織を使用した実験は、おおむね計画通りに進行しており、よって平成30年度の本研究課題の進捗状況に関しては、「概ね順調に進展している。」と自己評価する
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画については、昨年度提出した本研究の実施状況報告書に、ミトコンドリア機能異常を示す培養細胞(MEF細胞)を使用した実験系の確立が難しかったため、ミトコンドリア機能異常(p32cKO)マウスの心臓組織を使用した実験に重きをおくことを記載した。よって今後もp32cKOマウスと正常(WT)マウスの両心臓組織(心筋組織)を使用しての実験を行っていく予定である。 ミトコンドリア機能異常(p32KO)マウスの心臓組織における葉酸、糖質代謝機構の分子生物学的検討とp32タンパク質の分子機能の解明: ミトコンドリア機能異常を示す心筋特異的p32KOマウスと正常(WT)マウスの各心筋組織を使用して実験を継続していく。平成30年度に検出した葉酸代謝を介するOne-carbon metabolismに関係する酵素群だけでなく、他の糖質さらには脂質(コレステロール)代謝に関する酵素群の発現を検討する。また、葉酸代謝(One-carbon metabolism)はNADPH産生にも関わっているためNADPH産生に関わる酵素群の発現も含め検討していく。さらに性や月齢による差の検討も行っていく。また遺伝子レベルの実験に関しても可能な限り進めて行き、ミトコンドリア機能異常のある心臓組織での葉酸代謝機構の分子生物学的解明とp32タンパク質の関連性を検討していく。
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Causes of Carryover |
平成30年度はおおむね計画通りに実験を進めたが、助成金の次年度使用額が生じた理由としては、研究計画の中で、現時点までに結果の出た実験に関して、以前に購入していた抗体等の試薬を使用しそれで間に合ったためと、実験機器に関しては、共同研究機関の研究室にある機器を主に使用しているためである。令和元年度は、抗体や試薬の補充、および実験に使用している消耗品の購入、さらに学会発表時に旅費と論文等の報告のために計画的に使用していく。
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